「能力のある人間の下では、部下は育たない」と言われますが、必ずしもそうではないと思います。
部下に任せる気持ちがあり、部下の失敗も丸ごと引き受ける気持ちのある優秀な人は、部下育成も上手です。
能力に問題のある部下を持っても、とにかく教え込み、辛抱強くひたすらやらせて、実力アップにあの手この手を使いますから、その部下なりに仕事ができるように持って行きます。
有能な上司は、仕事の指示命令が具体的で明瞭、仕事に対する基本方針がしっかりしてぶれません。ですから部下は安心できるし、有能な上司を信頼しているので、自分の仕事に集中できます。
長い目で見た問題は、有能な上司は自分の仕事を自分でドンドンこなし、新しい仕事も自分が真っ先に手を付けますから、部下が上司をサポートすることがありません。
困ることは、上司を自分から補完するとか、上司の仕事を引き受けられるように準備するという発想も行動も生まれないことです。
また、部下の潜在力の開発が後手となることがありますね。
有能な上司も、諸々の事情で手がいっぱいで、応援が必要な場面が出てきますが、部下の能力開発が後手となると、仕事の振りようがなく、ますます上司が孤軍奮闘ということも起きて来ます。
よく見られることですが、有能な上司が身近にいると、部下は自分で考える前に、すぐ上司に助言や指示をを求めにいくでしょう。これが何年も続くと、上司を抜くような部下が育たなくなります。
有能な上司であっても、部下育成経験がないと、部下の失敗や手直しが不効率で一時的な必要悪とできず、途中で部下の仕事を取り上げてしまうケースもあります。これでは部下は伸びません。
現場実務でも部下育成支援の問題が起きますが、特にマネジメントスキルの取得での管理者層の育成支援の遅れや欠落が目立つように思います。
繰り返し言うことですが、上司の仕事はいつか自分が担当する仕事であり、自分の仕事はいつ株価に譲る仕事です。
その「いつか」が想定できるか、「いつか」はないと錯覚し続けるかでは、次世代人材育成に大きな差が出ます。
[ 更新:2018-10-21 09:04:26 ]