部下育成(2):教え方と学び方

人の育て方としては、「教育型」と「訓練型」がある。「教え込み型」と「滲み込み型」と表現する人もいるし、仏教の悟りに至る道の「理入」と「行入」の違いと言っては乱暴だろうか。

 「教育型」は人間力や基礎力の形成を重視する教え方、「訓練型」は即戦力養成重視といえるだろう。トヨタの新人セールス時代は、札幌本社は「教育型」だが現場は「訓練型」と際立っていた。前職の税理士事務所では、私が入った頃は所属のTKC研修は「教育型」であり、事務所内では職人気質の「訓練型」だったように思う。
 地域社会に関わる企業の機能性と成果への経験という企業の歴史の中で、人材育成の仕組みが培われていくものだ。最近は中途採用者に即戦力としての成果を求めるが、中小企業でも固有の組織風土があり、それらを中途採用者にどう教え込むかも実務上は重要な課題となると私は考えている。
 最近のマネジメント(経営管理)はこれまでと異なり、中小企業でも高度となっているし難しくなっている。私の大学時代の授業を振り返ると、学ぶ科目ごとに全く知らない新しい概念が大量に出てきた。とても授業時間内では覚えきれない、予習をしても復習をしても最初は覚えきれなかった。その概念、定理、成立のプロセスなどの意味の理解がなかなかできず、しばらく(3か月から半年)経ってから急に分かる、納得できる、腑に落ちるという経験をした。新しいことを学ぶ時は今でもこの繰り返しだ。そう簡単に分かるものは少ないし、すぐ分かるものは実務にはあまり価値がない。
 高度な学習になればなるほど、他の関連事項や領域の知識とそれらと絡んだ応用が求められる。多くの知識が絡み合い、重なり合った結果、混乱や混迷の結果「あーそうか、そうなんだ」という時を迎える。それまでは、分からないところは一旦飛ばし、やっぱり必要だからとまた始めからやり直すことの繰返しが続く。時には分らぬままでも、先輩や上司の言われるとおり素直に進めるしかなかった。
 このような課題に対し、「経営コンサルタントはプロなのだから素人には簡潔に一言で説明せよ!」と詰め寄る管理者や経営者が常にいる。私の修行が足りないのだが、現実は実に悩ましいものだと思う時である。

[ 2008-11-24 08:41:53 ]


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