◆中小企業は資本や人材にどうしても制約があります。

 それ故、小さくても光るもの(強み・差別化要素)をしっかり持ち、その知名度を身の丈に合わせて広めるマーケティングが第一歩と思います。この「小さくとも光るもの」、「核となるもの」があいまいなままに手を広げようとすると、中小企業にとっては危険な量との闘いに入り、往々にして負け戦となっているようです。確かに理想は、「急成長・高収益・健全な財務内容」ですが、この3拍子がそろっている中小企業は極めて稀ではないでしょうか。中小企業は、どこかアンバランスな側面を持っています。その点を認識し、バランスを保つ舵取りも中小企業経営者の腕の見せ所でしょう。

◆今はある意味経済は混沌期です。縮小均衡期の末期ともいえます。この時期の基本的な管理の流れは、「負債の圧縮と設備投資の手控え」です。これと逆の意思決定をなされた方は、キャッシュフローを安定させるのに相当苦労されているはずです。企業評価の尺度も、売上高の追求ではなく「収益性」の追求に変わりました。お客様には3年前から「売上は大事だが、利益高・利益率はもっと大事!」と言い続けていますが、黒字体質の定着しない企業では、売上は気にされ計算されるのですが、限界利益計算はムラが多く、時には経理締めで原価高に慌てる事例もあります。このような企業は、業界内の統合に身を委ねる方が結果的に生き残れるのでは、と感じるときもあります。

◆日本の中小企業は、「従業員の幸福と安全を守るという社会的組織としての使命を大切にすると良い」、というのがジェームズ・アベグレン氏の意見です。それに対し、私たちは大切にすべき日本の文化に根ざす価値観を自覚し、それを伝承しょうとしているでしょうか。剥き出しの個人主義が出てきてはいないでしょうか。良い意味の「組織への帰属意識」は、経営者にとっても社員にとっても大切なものです。企業の基盤を社員と考えるなら、ある程度密接に結びついた社会組織の維持は必要でしょう。その「人」が、自己研鑽を続け、研究開発に力を注ぎ、高付加価値商品やサービスを生み出し、東アジア地域と連携していくと、新たな可能性が一層広がるとも指摘されていました。

*以下は、日本経済新聞・北海道新聞・中小企業家新聞・日経ビジネス・知研フォーラム等に掲載された中から、中小企業経営に応用できそうな部分をピックアップしてお知らせするものです。

★学力底割れを防げ 苅谷 剛彦氏(教育社会学者)★
 2001年に関西地区で、2002年には関東地区で、国語と算数、数学の学力を10年前と比較する調査をした。その結果を見ると、読解力、計算力といったいわゆる基礎学力は、平均的に10%ぐらい落ちている。しかもできる子とできない子の格差が広がっている。同時に行なった生活に関するアンケートによると、塾に行っていない子供の学力が特に落ちている。そして。きちんと歯磨きをするとか、朝ごはんを食べるとかいった生活習慣と学力との相関関係が強くなっていた。つまり家庭でのしつけが、子供の学力に大きく影響を及ぼしている。
 僕は97年に高校生の勉強時間について調査した。すると79年の調査データに比べて高校生の勉強時間はかなり減っていた。しかも中身をよく見ると、親の学歴や職業などによる階層間格差が拡大していることが分かった。だから僕は当初から学力低下の問題は階層化の問題だと言ってきた。
 中学校で長く国語を教えてこられた大村はまさんという今年99歳になる彼女は、「手引きをすることが教師の役目」と言うんです。たじろいでいる子供がいたら、近づいていって、引っ張り上げる、それが教えるということだと。
 理想論の陰で問題が生じるときには、必ず弱い所にしわ寄せが来る。それが今、階層化として表れている。日本の教育関係者は、子供の学力による差別をなくすことを平等と言い、親の階層といった部分の格差を全く問題にしてきませんでした。「どんな子でも頑張ればできる」という努力信仰が強かった。多様化の時代に我々が唯一共有できるのは、自由と平等の原則です。どんな人間になるかは自分で決めていい。だけど皆が自由でいるためには、平等が条件になる。不平等な社会では不自由な人たちが沢山出てしまう。民主主義社会では、利口な人が多いほど社会は健全になる。価値観が多様でも、判断の基盤がきちんとしていれば、議論して、ある選択肢に収斂させればいいのだ。大多数の人たちがその力を持っていなければ、社会は歪んでしまう。今の問題は、勉強のできない子供がそのまま置いていかれても、誰も責任を負わない仕組になっていることだ。

 日経ビジネスの読者からの投書の転載(2005.2.28号)お金で仕事を選ぶのは当然 (東京都、中学生、13歳) 
 僕は今中学1年生です。数学と理科が大好きで、高校生の参考書を読んでいます。パソコンでプログラムを組んで、ゲームを作ったりもします。将来は機械を作る仕事をしたいと思います。中村修二さんの裁判について2月7日号のこの欄で「社会的使命達成の方がお金より大事」という方がいました。 でも、僕はお金の方が大事だと思います。社会のために尽くしても別にいいことなんてないけれど、お金があればいいことがたくさんあります。 お金持ちになりたいからみんな新しい発明をしようとがんばるのであって、お金がもらえないんだったら苦労して発明なんかしないと思います。「子供が収入の可能性だけで職業を選ぶというのも、心寂しい社会ではないか」とありました。僕はまだ子供ですが将来はお金で仕事を判断したいです。大変で少ししかお金をもらえない仕事より、楽でたくさんお金が仕事の方がいいと思います。 中村さんはスゴイ発明をしたのに成果をみんなほかの人に取られて、ひどいと思います。それだったら、自分で発明しないで、ほかの人の発明でお金持ちになる方がいいと思います。 中村さんは「司法は腐っている」と言っていますが、僕もそう思います。
*日経ビジネスでは実名で掲載されていましたが、ここでは伏せさせていただきました。

★ 東海大学名誉教授 唐津 一氏 ★
 製造業が作る製品は、本来欠陥ゼロが求められる。品質を高めるとコスト面でも有利に働く。高い品質には生産性の高い現場が必要になる。おのずと工場の稼働率は上がる。一方で不良品が減るので製造原価は下がる。不良品をはねる検査も効率化される。この全てがコスト低減につながる。管理ポイントは、製造や設計などの上流工程にある。

★ フィリップ・コトラー教授 ★
 マーケティングでは外部の多く情報を分析したり利用したりするが、一方で企業が自身の価値を忘れている場合もある。社内をじっくり見直すことで新たな人材や売り物を発見する事も多い。禅と同様、自身に向き合うと意味がある。市場や顧客の動向は見えない部分が残る。それでも受け入れられる訴求力を持つには、マーケティング担当者の情熱が大切。

 「利益の上がらないものはやらない」という表現は普通に使われています。社内展開しようとするとき、「利益」をどうとらえるか共通認識ができていないと、ちぐはぐな運用となります。限界利益段階、売上総利益段階で黒字であるべきか、営業利益段階で黒字(社内貢献利益を計上し)黒字であるべきか、経常利益段階(投資キャッシュフローを吸収し)で黒字であるべきか、評価基準、その理由、意思決定の種類、タイミング(時期)、実行責任者、顛末の確認等々管理ポイントは多々あるのですが、「売上の上がらないものは辞めろ!」と言う掛け声だけが響いている会社はないでしょうか。
  同様に「将来性のない仕事はやらない」という言葉も普通に使われています。この「将来性」の定義は、期間は、投資コストの限界点は、投資コストの計算手法ルールの統一は、投資採算計算のルールは・・・こちらも管理ポイントは多々あります。新聞や本の魅惑的な標題、セミナーや同業者仲間からの断片的な知識に飛びついて、その内容について深く掘り下げることなく社内に号令を発し、うやむやと成ってしまう事例も随分聞きます。あいまいな知識をもとに、あいまいに指示命令し、あいまいな理解で行動したところで、あいまいな結果にしかならないと思いませんか。これは赤字体質の企業に普通に見られることです。「分からないこと」を「分からない」と言える職場環境であればまだ良いのですが、「あいまい」なまま「分かったつもり」で、「できる範囲」あるいは「先送り」その上「結果無責任」では赤字は止まりません。

★ ワークスアプリケーションズCEO 牧野 正幸氏 ★
 ありきたりの仕事をする場合は経験がものをいうが、過去の経験はほとんど意味がない。顧客に言われたとおりにきっちり作るというのは、知識と経験をベースにした問題解決に過ぎないからだ。しかし本来求められる能力は、顧客の言う事を聞きながらも、すべての顧客が満足できるものを作ること。
優秀な人かどうかを判断する上で分かりやすいのは、自由に発想が飛躍していけるタイプや、一度にいろいろな事を考えて一つひとつ解決できるタイプ。素晴らしく優秀な人材は、100人に1人くらいはいる。そういう人たちは、絶えず違う答えを持ってくる。失敗もするが成功もする。決して人の言う事を鵜呑みにしない。いつもバランスよく考え、かつ実行するスピードもとても速い。我々はこういう人達を問題解決能力の高い人材と呼んでいる。
 命令をしても、今の若い人たちは納得しないとすぐ辞めてしまう。よほど危機的な時は命令するが、そうでない場合は納得させるようにしている。優秀な人間ほど、上司の言う事に納得しないまま黙ってついてくるということはない。今の若い人がすぐ会社を辞めるのは、食うに困ることがないから。自分が興奮できるフィールドで、能力に見合った仕事をさせてもらえるかがとても重要だ。優秀な人材を集める事、それに見合う難易度の高い仕事を用意しなければならず、その能力を受け止められる組織が必要になる。
 よく成果主義の失敗が言われる。しかし成果主義のほかに一体どのような評価方法があるのだろうか。指導する側がプロセスを見ないで結果だけで評価してしまい、成果主義ではなく「結果主義」に陥っている事が問題の本質ではないか。

「日本の仏教」 渡辺 照宏著(岩波新書)
 仏教であるためには、@道徳的規準(戒律)、A瞑想・静観(禅定)、B宗教的叡智(智慧)の3つは基本事項となる。仏教は特殊の教理を人に押し付けるものではなく、各自が内面に具えている潜在的な菩提心を目覚めさせて、人間の完成に至るよう指導することを眼目とする。よって各個人が既に持っている信念や体験を生かし、向上を可能にさせようとする。西洋においてゲーテは次のように言った。「本当の宗教はただ二つしかない。そのうちの一つは我々の中、及びまわりにある聖なるものを、全く形を離れて認め敬う宗教であり、もう一つは、最も美しい形において認め敬う宗教である。そのどちらでもないものは偶像崇拝である。」一方空海は、「すべてものの性質は必ずしも同じではない。人は各々自分たちにふさわしい道を選べばよい。」と言われた。選択(せんちゃく、センジャクとも読む)は、良いもの、優れたものを選びとり、劣ったものを捨てることを言い、廻向(えこう、回向)は、自分の善行の功徳を他人に譲り渡すという意味がある。仏教は人間が自己を完成すると同時に、他の人々を幸福にすべきである、という理想を示した。

【日経ビジネス他の印象記事・言葉】
*イノベーションが起きるのは、あくまで企業の活力である。
*仕事歴・経験歴・学習歴。
*科学的に因果律を究明する習慣は大切。
*人はこうありたいと願う自分とそうでない自分との間で迷い苦しむ。あるべき自分は、自分が作り出したイメージであり、一方そうでない自分は、間違いなくここにいる現実の自分のこと。どちらも否定せずに受け入れることが必要。
*「科学的態度」とは次のことを言う。どこまでも客観的に正確に資料を追求し、確実な真理を把握する努力。必要に応じ新しい資料を探す。歴史的にも言語的にも正確を期す。その得られた結果を素直に受け入れる。
*尊(みこと)とは、思うこと、言うこと、行なうことの三つが揃った人格を指す。
*見据えたものは完徹する。生き残りの執念。
*常に平常心を忘れず、コトをひとつひとつ積み重ねる姿勢こそが成功につながる。
*年月をかけた意識付けは簡単には崩れないものだ。(トーリー監督)
*これから必用なGDPは、G:元気、D:度胸、P:パフォーマンス。(フリープロデュ―サー木村政雄氏)
*「人間と言うものは、自己に加えられる非難に対しては、その非難が理由のあるものであろうとなかろうと、それを拒もうとするものである。」(ヤスペレス)
*「哲学者たちは世界をただ様々に解釈してきただけである。肝腎なのはそれを変える事である。」(マルクス)

[ 2006-06-04 09:53:25 ]


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