◆以前、「指示した事を、指示したようにすればよい。」という上司にのもとで仕事をした経験があります。加えて感情が前に出る人でした。管理者が権限をかさにきて怒れば、部下の立場では萎縮するしかありません。この上司の下では、徐々に皆「言われた事だけやればいい。」「言われた事しかやらない。」という仕事ぶりに変わっていきました。お客様より上司の顔色を気にして仕事をするようになったわけですから、まさに思考停止状態です。独立した今、その時のお客様に申し訳なかった思いが湧いてきます。この悔いを繰り返す事のないように、自分を戒めて仕事を見るように心がけています。
◆TACの斎藤博明社長は「いくら考えても分からない問題は、考える材料が不足している場合が多かった。無理に結論を出さずに放っておくと時間が解決してくれた。問題が発生(潜行)しつつある時には有効な手を打つ事ができた。だが、問題が顕在化してしまうと、打つ手は限られた。」と書かれています。含蓄があり、応用ができそうですね。
*以下は、日本経済新聞・北海道新聞・中小企業家新聞・日経ビジネス・知研フォーラム等に掲載された中から、中小企業経営に応用できそうな部分をピックアップしてお知らせするものです。
★ 元首相 中曽根 康弘氏 ★
「心の軸」とは、嘘を言ってはいけないとか、親を大事にするとか、人間として生きている基本の型、いわば自己規律です。小学校の場合、そういうことは先生が生徒に、厳しさと同時に愛情を持って教え込むしかありません。中学校になると、今度は家とか世界とか、自分と外部との関係を認識させる。高校では志、大学では使命感を持たせるのが各学校の役割でしょう。
★ セイコーエプソン会長 安川 英昭氏 ★
リーダーの役割は、人を動かすことです。いくら立派なことを言ったって、人に動いてもらわなければ何もなりません。人を動かすにはまず人の心を動かすこと。それがリーダーの力というものです。心が動けば、必ず行動になって表れる。そのことを事業のリストラを通じて強く学びました。
★ 作家 横山 秀夫氏 ★
会社はある意味、村です。それぞれの村には、その村人にしか分からない共通の言語があるように、同じ業種、同じ会社の人間だから理解してもらえる悩みや苦しみ、やり遂げた仕事への称賛などがある。会社と言う組織は人を殺すこともあるけれど、人を最も輝かせてくれる舞台でもあるんです。人間って「自分を認めて欲しい、人に認められたい」というキャッチボール無しには生きづらいですから・・・
変だぞ日本人の順法意識 元国連事務次長 明石 康氏
目に余るのは露骨な規則違反です。先日繁華街を歩いていて思わず耳をふさいでしまいました。店頭のスピーカーから大音量で流れる宣伝文句や右翼の街宣車。音の暴力です。警察官は「明らかに違反」というが、取り締まらない。騒音に限りません。自動車の駐車違反、スピード違反などきりがない。一体日本は法治国家なのかと首をひねってしまいます。ところが一方、何の疑問も持たずに守っている規則もある。例えば赤信号。明らかに自動車が来ないのに、いつまでも赤信号が変わるのを待っています。野放図だったり従順だったり、取り締まる方も守る方も、順法意識がちぐはぐになっているのです。守られない規則や、守られていても意味のない規則をどうして放置しているのでしょうか。日本人は集団行動に安心して、原点の洗い直しを怠る癖があります。問題の放置はさらに順法意識をゆがめます。無意味な規則は撤廃するか改正すべきですし、信号なら点灯時間を変更するなど運用を見直してもいい。サムスン電子の尹鍾龍副会長は、競争を勝ち抜くカギは、常に危機感を維持し、スピードを重視する経営だと指摘しています。国家経営も同じでしょう。少子高齢化や学力低下など国家衰退の兆しが見えているし、中国などの追い上げもすさまじい。変化に迅速に対応できない社会は競争力が低下するだけです。身の回りのタブーや聖域を排除し、現状には安住しないことから早く始めなくては、日本は世界の大国から脱落する。猶予はありません。「のろさ」を「ゆとり」と間違えてはいけません。スピードが運命を分けます。
★ 日本的経営は死なず ジェームズ・アベグレン氏 ★
日本企業は、これまで歴史の中で築いてきた独自の経営手法に、もっと自信を持つべきだし、無理をして別のものを取り入れるべきではない。欧米と日本企業の価値観の違いは、会社を動かす「人間」に対する考え方にある。欧米企業では、人間は会社を動かすための単なる「道具」の一つとしてしかとらえてきていない。つまり「会社=経済組織」という見方が強い。この考えの下では、会社利益を出すための組織に過ぎないから、物的資産として売買の対象にもなるし、人の入れ替えも激しい。経営者であっても、どうしても短期で成果を出せる戦略を取らざるを得ない。短期的視点に基づく組織体では、そもそも人間を育成しようと言う発想が浮かんでくるわけがない。
一方の日本企業の価値観は、“人間重視”であり、「会社=社会組織」という意味合いが大きい。会社は従業員と「終身の関係」を結んでいるから、構成員の生活のために、長期にわたって存続することが最大の目標となる。さらに、この組織の基盤にあるのは人間だから、人の力を信じ、尊重し、育てるということが最も大切なことだと受け止められてきた。
米国の強さは会社内での人材教育よりも、外国からトップ級の優秀な人間が集まってくる社会的素地にあると思う。日本では経営者の平均年間給与が一般従業員の9倍であるのに対し、米国では約530倍を受け取っている。この水準はいくらなんでも高すぎる。純粋に成果に基づく報酬を得ていると言うならば、「あなたは神様か何かですか?」と言いたくなるほどで、全くナンセンスである。
日本企業の場合、取締役はあくまで内部の人間を育成することで生み出される。会社のこと、内部人材のことを熟知し、意思決定が下せる能力を身につけたことを前提に取締役にするのだから、外部の人間よりもはるかに確実な意思決定ができる。
ガバナンスについて言えば、米国では「企業は株主のためにある」という明確な定義がある。企業の全ての資産、収入、権限を株主の代表に引き渡すと言う考え方である、先進国でこのような仕組みを取り入れているのは米国と英国くらいである。その他のほとんどの国では「企業は社会との調和のため、雇用のためにある」と定義されている。
移民の受け入れについては、日本は社会的な結びつきが極めて強い国だから、集団としての移民の受け入れに伴うコストは非常に高くつく。そもそも、移民を受け入れることができるのは米国やカナダ、オーストラリアなど広い土地があって原材料が豊富にある、そして社会的な結びつきが弱い国である。
将来の高付加価値社会では、人は企業を担う要素としてさらに重要な存在になっていくだろう。従って、日本の企業内人材教育は今後その重要性を増していくと思う。
21世紀の大学教育への提言 堀場製作所会長 堀場 雅夫氏
今世界共通の大きな問題として、近代西洋文明が一つの限界に来ていることがある。自由主義、資本主義経済と科学技術の進歩で、富の偏重が拡大し、テロを誘発する要因になっている。21世紀が抱えるもう一つの問題は地球環境をどう守るかだ。私は学生時代、原子物理学を専攻していた。しかし敗戦で大学の実験室がつぶされ、仕方なく自分で仕事を始めた。今のベンチャーの走りだった。学位も欲しかったので、仕事でやっていた分析の対象を血液にして、医学部へ博士論文を出した。理学部出身のせいか、なかなか認めてもらえなかったが、仕事の後、夜遅くまで医学の勉強をして、1年後ようやく博士号をもらうことができた。この勉強で初めて、当時の自然科学が生命に対して無力であることを知ると同時に、人間というのは何と素晴らしいものか、その存在のすごさに気がついた。しかしこのすごい人間も必ず死ぬ。どんなに努力しても必ず死を迎える。ではどうしたらいいのか、必死に考えた。その答えはこの世に生を受けて死ぬまでどうやって素晴らしい人生を送るか、生きがいを持つか。その一点だった。「働くことが楽しい、面白い。明日はもっと楽しく働こう」という気持ちが人生を幸福にする。そういう会社、そういう社会を作ることを目指すべきだと思った。大学は知の塊だ。しかしダイヤモンドと同じで、磨かないと価値は上がらない。知を磨くには産業や市場とつながっていくのが一番賢い方法だ。そこに産学連携の意味がある。大学の知と産業界のパワーががっちり手をつなぐことによって、ニュービジネスの誕生も可能となる。
チームワークで勝負する【対談】東京大学大学院教授 伊藤 元重氏と松下電器産業社長 中村 邦夫氏
世界中でチームワークができる民族というのは、極論すると日本人だけではなかろうか。日本では、現場とマネジメントが一緒になって、どうやれば生産性を上げることができるか考える。皆で考え皆で実行しようという機運が高まってきている。1人が考えて、それを他の人にやらせるような単純な上意下達は、日本ではほとんど通用しない。人間が一番楽しく働けるのは、自分でプラン・アクション・チェックを回せる仕事。現場が活性化すると企業は強くなる。お客様本意を実現するための組織であり人材である。お客様から見て、階層が4層以上ある会社はダメだと言われて調べたら、一番たくさんあった事業部は13層もあった。ある意味で、お客様の数はそれほど多くはないが、毎日来てくださる、という道は模索したい。そのためには、なぜそのお客様がその商品を買っているのか、ニーズの源泉を理解して売らなくてはいけない。加えて、モノ作りの現場に「今、なぜ自分たちがこの製品を作る必要があるのか」あるいは「この製品のどの部分を改良すべきか」という情報も伝えなくてはいけない。 世界では、皆で生産性を上げて、皆で売上を伸ばして、そして賃金まで皆で分かち合おうという日本企業の考え方は絶対に通じない。成果をあげる人と上げない人をしっかり区別する必要がある。一番大事なのは、スキルを上げられる機会を用意して、そこでスキルを上げ、業績に貢献した人には、それに見合う報酬を支払っていくことだ。優れたスキルといっても、個人固有のものであるから、そのスキルで部下を管理しようと思ってもうまくはいかない。それよりもチームの目標を明確にし、目標達成のやり方をみんなで議論する、それから部下をやる気にさせることだ。例えばムカデ競争の場合、遅い人に合わせないと全員がずっこけてしまう。でも遅い人に合わせると効率は悪い。結局、遅い人を励ましながら走るしかない。それができる人をチームリーダーという。
★ 元NHK美粧師 岡野 宏氏 ★
人間の顔には、その人が昨日までしてきた行いが刻まれています。顔が人生を背負っていると言ってもいい。一流の人には、力を抜いた時でも顔に締りがあります。この様子を私は「芯がある」と表現しました。眉間に神経が集中している感じです。目や眉、鼻などが顔の中心に寄った印象になります。
相手にどのような印象を持って欲しいかが重要なのです。ファッションは単なる自己満足の手段ではなく手、相手を考えておこなうもの。それが結果として自分に返ってくるのです。
【今月の日経ビジネス他の印象記事・言葉】
*「のうりき脳力」とは、物事の本質を考え抜く力。能力を鍛えるには歴史軸や空間軸の中で思索し、世界の広さを思い知らねばならない。無限の宇宙の中に相対座標を描き、自らの自画像を客観視する、そして常に現場に立ち、現実世界に肉薄する事で、問題の抽出が行え、解決に立ち向かえる。(寺島 実郎氏)
*全ての組織には、方針や活動の土台となる健全な信条が必要。これらを忠実に固守できるか否かが、会社の成否を決める。(トーマス・J・ワトソンJr氏)