中小企業だからこそ、社長の意志を汲んで社員が働く、お金は大事に使う(無駄なものは買わない、使い込みはしない)ことは大切です。しかし会議では面と向かって反対しないのに、実際には全く指示通りに動かないことがあります。それ故、大事なことは信頼できる社員、力のある社員、能力のある社員に委ねます。信頼できない社員、力のない社員、能力のない社員を安易に登用すると自らリスクを招き入れることとなります。「トップは人を見る目をつけましょう」と提案する理由です。それも採用段階を大事にしましょう。社会に出るまでの20年以上、頑張ったことのない人が、採用後急に頑張るということは期待できないからです。
◆挨拶を大事にしましょう。毎朝礼儀正しい言葉を発すれば、行動も投げやりにはできなくなるはずです。業務品質を高めるには、社内教育が必要です。その基本が挨拶ではないでしょうか。自分たちでルールを決め、決めたルールは自分たちで守るのが基本です。ルールを時々リニューアルするという習慣をつけるともっと良いでしょう。
◆「どんな会社にしたいですか?」と質問をすると「強くて良い会社にしたい!」と回答されることがあります。続けて、「強くて良い会社とは具体的にどのような会社ですか?」と尋ねると「・・・」というケースがあります。「我社はこうありたい!」という具体的ビジョンがあると無いとでは大違いです。こうありたい自分、会社のイメージを膨らませましょう!
◆一昨年「7・5・3現象」なる言葉が現れました。経済広報センターの以前のアンケート調査結果では、若者が原因という見方が80%を占めたが、29歳以下では雇用主側が原因という回答が18%だったそうです。若者に原因があると思う理由は「下積みの仕事に意義を見出せず、つらくとも我慢する精神的タふさがない」というものがある一方、雇用主に原因があるという理由は「組織として人材を育てようとの意識が低い」というものが各々最多だったそうです。どちらも一理ありますね。相互の意見を尊重し、バランスを取ることは必要です。偏ってはいけません。対立ではなく融合・協調がより望ましいことと思います。
◆民間企業であれば、中小企業であってもビジネスコスト(経費)の削減と新製品、新サービスの提供による顧客サービスの向上は前提条件ですね。そのために費用と時間をかけて勉強や研究をするわけです。常にこうすれば効率化する、こうすれば便利になるというテーマを持ち続けましょう。改善会議で「何かないか?」と問い掛けられ、新人クラスはともかくベテランが「特に〜、別に〜」では問題意識に疑問符ですね。改善以前のレベルですから、先行きは厳しいものがあると思います。
*以下は、日本経済新聞・北海道新聞・中小企業家新聞・日経ビジネス・知研フォーラム等に掲載された中から、中小企業経営に応用できそうな部分をピックアップしてお知らせするものです。
★ 日本板硝子会長 出原 洋三氏 ★
会社というものは不思議なもので、一度黒字にしてしまうと体質がそれに合わせて変わるのです。「無駄を出すまい」「より効率を上げるにはどうしたらいいか」と社員が考えるようになるのです。企業を変えるためには最も大事なのは社員の意識だと思うのです。
「何としても目標を達成する」厳しさは必須なのです。ただ厳しいだけでは会社生活はいたたまれないものになります。そこで 「会社を自分で面白い場にしてくれ」という意味を込めて、自分でスキルを伸ばすように勉強し、自分の仕事に工夫を加えて面白くして下さい、とも言ったのです。
中堅社員から上の社員には、弁護士や公認会計士のようなプロとして通用する「スペシャリスト」、又は自分の担当業務に於いては誰にも負けないという社内のプロという意味の「エキスパート」、そして経営者を目指す「マネージャー」の3つのコースを選んでもらい、それに沿って自分を磨いてもらうように促しました。
「厳しく、楽しく、たくましく」、そして何としても実績を残す。企業を変えるきっかけは、そんな社員の意識改革にもあるのだと思います。
★ 産業再生機構マネージングディレクター 小城 武彦氏 ★
結局、会社を発展させるのもダメにするのもヒトですよ。財務的な外科手術は難しくないが、ヒトの意識や行動を変えるのは簡単ではない。でもそれをしないと改革はできません。
★ 矢崎総業顧問、元大蔵事務次官 尾崎 護氏 ★
民間企業でも、一部の反対を押し切って取組んだ事業が思うように進まない場合があるでしょう。そんな時、自分のやり方を徹底的に分析し、反省するとともに、かつての反対意見に含まれていた貴重な提言を生かして、次の一手を打つことができる人が成功を勝ち取るのではないでしょうか。
『菜根譚』 洪 自誠 本田 有明氏(人材革新研究所所長)
当たり前のことを、当たり前と認識して入るものの、きちんと実行するのが難しい。人を成功に導く3要素は<運・鈍・根>だ。運に恵まれること、あせらずじっくり進むこと、そして根気よく続けること。
●仕事に行き詰まり形勢が窮まった者は、初心に立ち返って考え直すべきである。
●一生懸命に苦心している中に、とかく心を喜ばすことがあるものだ。
●まだ成就していない事業の完成をあせるよい、すでに完成している事業を長く保ち発展させるほうがましである。また過去の過失をいつまでも後悔するより、将来の失敗を早く予防するほうがましである。
●部下の者の功労と過失は、少しも曖昧にしてはならない。もしも曖昧にすれば、部下は怠け心をもつようになる。これに反して個人的な恩義と遺恨は、ハッキリしすぎてはいけない。はっきりしすぎると、部下はそむく心を起こすようになる。
★ 神戸製鋼所ラグビー部ゼネラルマネージャー 平尾 誠二氏 ★
厳しい“マーケット”の中で生き残らなければならない環境が組織を鍛えるというのは、スポーツ界も企業社会も同じだろう。優勝という目標があっても、選手の立場からすれば、目の前の試合に勝つことに集中して当然だ。だがチームリーダーは1つの試合の集中すると同時に、常に将来を見据えた戦略を打ち出さなければならない。試合という「点」を、太い線で結ぶように戦略を立てていく能力が問われる。
勝つためのパターンをできるだけ多くもつことが求められる。基本となるスキルを磨き、自分たちの得意な「型」を持つことに加え、相手の型や戦況に応じて戦略を大胆にアレンジする能力を身につけなければ本当に強い組織とは言えない。
情報戦略もカギを握る。集めた情報を分析して、必要以上の情報を捨てられる能力が大事だ。これは人間の感覚的なものだ。リーダーにはその目利きが必要だ。最終的には「できることだけをやる」といった割り切りも必要だ。
もうCMでは売れない 日経ビジネス 2004年11月8日号より
「露出」と「効果」は別物。広告自体にかかるコストよりも、メディアを利用して顧客を獲得するコストこそが重要だからだ。もう話題になるだけでは、商品の売上を伸ばすという広告本来の目的は達成できなくなった。よって広告効果を測定するノウハウが必要になった。マス広告は、ともすれば採算度外視の芸術作品のように扱われてきたが、いまや広告も企業にとって資金回収を前提とした「投資」の一部となった。マーケティングは、意味ある商品情報を特定の人に確実に届けること。なぜなら、他社の顧客を奪うこと、自社の顧客をより単価の高い商品へ誘導することで、売上を維持、拡大できる。誰に売るかを明確にし、その層に確実に届く広告を打つ。「認知」の段階でこそ、CMが最も効果的なメディアだったが、興味や関心を持ったり、購入を決めたきっかけは「口コミ」がトップ。広告はブランドを構築して、物を売る土壌を所までにとどめ、販売目標を定めた活動はプロモーションに委ねる。
★ 花王会長 後藤 卓也氏 ★
人間が育つには、判断をする場が必要だ。企業は毎日毎日何らかの判断を下さなければ成り立たない。この判断基準は、成功や失敗から学んだこと、様々な部署を渡り歩いて知ったことなどの経験で磨き上げられる。だから入社3年目と10年目、20年目の社員が同じ判断しかできないのはおかしいし、それでは困る。大事なことは、何を感じてどう行動するのかだと思う。
本来であれば、社員一人ひとりが自分で努力して問題解決するのが最も望ましい。しかし、その人の能力や経験だけで解決できない時もあるので、この場合は素早く豊富な経験を持つ上司に相談すればいい。部下に情報を伝えるだけの中継係のような中間管理職は不要。判断を下すという機能を管理職に持たせ人材育成しなければ組織の意味がない。
組織を決定づけるのは構成員のパーソナリティーとコミュニケーションに尽きる。パーソナリティーとしては、部門代表ではなく会社全体の利益を考えられる人なのか、相手を尊重しながら自分の意見をきちんと言える人なのかといったことが挙げられる。コミュニケーションについては、量と質を高める必要がある。
採用の超プロガ教える 伸ばす社長つぶす社長〜ワイキューブ代表取締役 安田 佳生氏~
伸びている会社の社長は、お客さんのことをあまり聞かないんです。逆に業績が上らない会社の社長はお客さんの言うことを全部聞いてしまう。利益をもたらさないお客の言うことを聞き出すと、良いお客様の要望を聞く時間がなくなってしまうからです。 社員の模範となるよう社員以上に頑張ってしまう人、そして業績が伸ばせない時にさらに頑張ってしまう社長もダメです。しかし、もっと効率のようやり方を思いついてから、頑張るのをやめようという人がほとんどです。まず今やっていることを止め、新しい仕組を考える暇を作ることです。変わるのは若くて社歴の浅い人が多い。捨てるものが軽いからでしょう。でも社長が変わらないといくら社員が頑張っても一緒です。そして事前の情報収集にもっとお金をかけましょう。売れるものを調べましょう。
★ 三菱証券会長 五味 康昌氏 ★
やるしかない。やらないで議論ばかりしている奴は多い。やってみて失敗した方が後悔しないし、そのプロセスでいろいろなことを学べる。・・・チームプレーは皆が得意技を出しながら志を1つにする必要がある。部下は不安なものだ。部下に命令して裁く上司、部下に任せて楽をする上司、管理する上司、このような上司が部下に全力投球させるのは無理だ。上司が自分の目で見て、自分の耳で聞いて、一番嫌なことは上司が自分でやる。何事も上の人間が率先してやること。これが良いチームを作る第一歩である。
★ 『ニッポン型上司が会社を滅ぼす!』宋 文州氏著(さんマーク出版) ★
上司の根本的な勘違いが部下のやる気をそいでいる。「俺が社員を食べさせているんだ」などといってはばからない社長に対しては、雇っているのは「労働」であって「人」そのものではないことに早く気づけ。上司というだけで部下の人間性をとやかく言う資格はない。
「社員は家族。うちは家族的経営がモットーだ」などと社長が口にするような会社は駄目だ。家族主義の根底には「家族=共に我慢すべき存在」という甘えがあり、今日の若い世代にそれを強いることは不可能だ。
部下に「自分で考えろ」と怒鳴っている上司は、都合のいい責任分散法を見つけただけに過ぎない。
★ JFEスチール社長 數土 文夫氏 ★
世の中の変化がこれだけ大きかったら、その変化に対応できるよう、自分を変えていかないといけません。時には失敗するかもしれませんが、変化しないよりは、知見や情報が集まる分だけましだと思います。・・・予測がつかないから予測しなかったらもっと悪い。予測し、選択肢をいくつも持っておき、十分ではなくてもある程度対応できる準備をしておかなければ。
★ 東海大学名誉教授 唐津 一氏 ★
外観は比較的シンプルな製品であっても、デザインの素晴らしいものが品質面で優れていることが多いのは日常的に経験する事実である。客観的な事実やデータだけでは判断を下しかねる状況に陥ったとき、何を拠り所にすればよいのかという問題解決のヒントがデザインにあるのではないかと思うからだ。
センスがある社員が選んだデザインは、量産時の歩留まりやコスト、包装・輸送や修理のしやすさなど、機能面でも優れていたことが多かった。数字などのデータで判断を下しにくい時には、今一度“原点”に立ち返ることが良い結果を生むのではないかと考えるようになった。
経営判断で迷った時、経営者は自らの経験や勘に頼るのではなく、顧客や取引先などの意見にも耳を傾けて欲しい。迷ったら原点に返る。それが良い結果を生むはずだと私は考えている。
★ 写真家 浅井 慎平氏 ★
小泉首相の言う人生いろいろはその場しのぎの言い逃れと思ったが、人生観も世界観もない処世術で誠実が見えない。人生いろいろは、あなたも勝手、私も好きなようにである。日本の人々は今をしのぎ、若者は今という時にしか興味を持てない。人々も子供たちも命を大切にしないのは、自分の心と出会う機会を失ってしまったことから始まった。欲望以外の自分の心に会えなければ他者の心はまるで見えない。自分に少しでも会えば、他者もまた自分と同じように時代の空間とこの時代を生き生かされている存在だと気づく。つまりもう一人の私が他者である。他者と共存する空間、時間の中で互いに気づかうのは、自分が快適であるための知恵だ。すべては「何故」を見落としたところから始まった。制度はあっても「何故」という理念がない。ゆえに何かが起きればその場をしのいでいくしかない。
【日経ビジネス他の印象記事・言葉】
*人の世は、生者のみにては成らず。いつも生者と死者とによってかたちづくられている。(江藤淳氏)
*若いときいろいろなことをしていると、50歳で全てがつながる。(八木哲郎氏)
*「社」土地神、「会」土地神を祭る集会。
*私は世界一幸福だ。幸運な男だ。日本人に生まれたことが幸福だ。素直な心になりましょう。素直な心はあなたを強く正しく聰明にします。迷うことはいいが、迷って道を踏み誤ってはいけない。迷わなくていいことを迷ってはいけない。自分の感情にとらわれてはいけない。(松下幸之助氏)