【趣味:音楽 JAZZ】 【ライフサイクル】 【破綻する経営者】 【育成】 【生活習慣】 【希望格差社会:山田昌弘氏】 【雑感】
【趣味:音楽 JAZZ】
ジャズミュージシャンの秋吉敏子さんをご存知ですか。アメリカで約50年音楽活動をされていますが、このたび米国立芸術基金から「ジャズマスターズ賞」を授与されました。ジャズミュージシャンにとっては最高の称号で、日本人では初めての受賞です。ご本人は、「日本人の自分がこの賞をもらえると思わなかったので、話を聞いたときには嬉しくて3日くらい興奮して眠れなかった。」とインタビューに答えていらっしゃいました。秋吉敏子さんといえば「ロング・イエロー・ロード」がテーマソングのようになっています。「黄色人種である日本人の自分が、アメリカの地でJAZZ演奏家として認められる道のりはとても遠い。」という思いをこめた曲です。かつての大阪万国博覧会場でのライブ演奏(このときはクァルテット)の評価は高いものがあります。
夫であるサックス奏者ルー・タバキン氏とジャズオーケストラを率い、和の要素を盛り込んだ曲で多くの人を魅了しました。このオーケストラの活動停止は個人的にはとても残念なのですが、ご本人はもっとピアノ演奏に専念したいとのことのようです。
1974年のアルバム「孤軍」は、フィリピンのルパング島で旧日本軍元少尉、小野田寛郎さんが発見された年の作品で、秋吉さんは「ジャズを演奏するに当たり日本人であることはマイナスと思っていたが、むしろ財産と考え、日本を誇りに思って生き抜こうとする思いを込めて、鼓などの和の要素を入れて作曲した。」そうです。(なお、秋吉さんは作曲のさい、アドリブ以外全てのパートの譜面を自ら書いて渡されていたそうです。)実際、西洋音階の中で生きる人たちに、和音階の要素が盛り込まれた曲を演奏してもらうのは大変でしょう。音楽学校を出た米国人の白人ミュージシャンたちに、できるだけ丁寧な表現で、なぜその音を必要とするのか、このように演奏するのか、理論的に、相手を思いやって徹底して説明を尽くされたそうです。異文化の地から来た人間には、西洋人と感性を共有することは容易ではないとして、お互い納得しあう関係を築く必要性を重視した結果、時が立つにつれて言葉が無くても分かり合える関係になっていった事を聞き、企業組織内の相互信頼の構築に相通ずるものがあると感じます。
【ライフサイクル】
企業を人に例えると、創業により生命が与えられ、倒産や廃業により死を迎えることになります。ライフサイクルは、一般に創業期・成長期・成熟期・衰退期に区分されます。企業が生きている、生かされているという現実は顧客・仕入先・借入先・従業員・公共・出資者(ステークホルダー:6種の利害関係人)との連続的な取引によって確認ができます。この連続的な取引は、双方に利益があること、すなわち共益があって持続することができ、一方のみが利益を得てもう片方が赤字では、取引の継続は難しくなります。赤字の累積では、支払い不能となり、取引は停止され、死を迎える企業が出てきます。
企業は、創業者の生命活動に比例し、成長期を経て成熟期を迎え、企業生命が衰退し倒産するのか、あるいは後継者に企業生命が受け継がれていくのかという、分岐点を必ず迎えます。持続する企業の生命活動の核となるのが、商品あるいはサービスを生み出す力、新技術開発力です。この力(エネルギー)の有無は持続力の大きな差となっていきます。企業は利害関係集団と共に生き、創造的な活動を行い、相互の利益を実現していきます。わが社は現在ライフサイクルのどの位置にいるのか、継続的な記録をし、定期的にチェックしましょう。我社の利害関係集団と、お互いに恵(利益)を分かち合っているか確認していきましょう。決算期前後がちょうど良いチェックポイントです。
【破綻する経営者】
創造経営北海道支部活動に理解を示してくださる方たちとの内輪の懇談会がありました。おかげさまで、それぞれの体感される創造経営談義に大いに沸きました。雑談の中で、破綻した取引先や飲食店の話が出まして、共通したことは、①自分の非を認めない、②責任転嫁が多い、③資金支援してくれた人への返済意思が見られないというものでした。
破綻まではいかないものの、継続的な赤字から抜け出そうと悪戦苦闘しているお客様企業もあります。多くは社長の多額の 個人資金の注入で延命しているのですが、問題が具体的になり、再建策も明確になっているものの、黒字と赤字を行ったり来たりで中々黒字が持続しません。黒字への経営計画が約束どおりに実行されないのです。ですから、社員たちも経営者をいまひとつ信用、信頼していない印象を受けます。自分がその立場にいれば当然ですね。
社長親子、あるいは社長と幹部の心からの相互信頼に基づく意思統一が弱く、ここをどう強化するか私もいろいろ試行錯誤するのですが、慢性的な赤字企業は持続力が無く、同じ問題を毎年定期的に繰り返します。売上や利益という成果を生むには、チームワークと業務(仕事)の質のレベルアップが必要なのですが、こちらもレベルアップしていかないのです。今までどおりはできるのですが、個人単位の保身に走り、変われないのですね。変われないから赤字体質にすぐ戻ってしまいます。
黒字を定着させるには、問題を誰かのせいにせず、自分が担う気持ちで立ち上がり、問題解決に向けて取組むリーダーシップと周りを巻き込む組織活動を起こしていかなければなりません。その前提として、経営者や幹部に、従業員一人ひとりに対する感謝と、今後への願いを明確にし、対話を実行するようお願いするのですが、言葉不足、「そんなこと言わなくとも分かるだろう、前に言っただろう、忙しい」等々でコミュニケーションが成立しません。時には、「コミュニケーションという言葉が嫌いだ!」とまで言われてしまいます。人は言葉に出して話をしなければ分からないことが多いし、分かり合えないことがあるからこそ言葉にして話し合うことの重要性を痛感します。
【育成】
企業が目先の利益、業績追求を優先すると、将来に向けての人材育成が蔑ろになってしまいます。ワンマン型の創業者社長が急逝したときなど、この問題(経営人材不足)が明白となり、企業存亡の危機となりやすいものです。永続企業を目指す場合、財務構造の健全性の構築と、本業の分野を常に深めると同時に関連する事業開発を担う次世代後継者群の育成を進めなくてはいけません。育成が難しいとするなら、資質のある人を発掘しなくてはいけないでしょう。
平時にこそ、それぞれの企業の財務構造の強化とは何かをしっかりイメージを具体的にしてください。私が継続的に関わる多くのお客様企業では、毎年決算書分析レポートを短文(資料含めて10ページ以内)であっても作成し、損益構造、貸借対照表の長所と課題、キャシュフローの状況を一緒にチェックしています。それから、私は深く関われませんが、本業の掘り下げも重要です。時には、従来どおり続けることが掘り下げであると誤解している管理者もいますのでご注意下さい。私自身は秀でた能力があるわけではないので、学生時代から「水滴石穿」を戒めの言葉として、地道にコツコツ努力する事を続けています。
赤字転落や経営者の急逝などの経営が困難な時は、腹をくくり、自分がしっかり当事者となり、その困難の克服を通じて人は成長していくものです。逃げてはいけません。当事者となって、失敗し、悔しい苦しい嫌な思いをしながら、しっかり取組んでいると不思議と必ず出てくる支援者、協力者がいます。彼らの力も借り、社員の協力を得て迷路を抜け出す頃は、実力が増しています。
理想は、定期的に当社の過去の成長要因と阻害要因、強みと弱み、失敗を検証し、自主的に商品・技術・顧客開拓をするための人材育成を期待して、中期経営計画を幹部あるいはその予備グループメンバーと策定していくと良いでしょう。現在あるお客様企業と1年をかけて社員たちを交え、中期経営計画策定プロジェクトを運営しています。
【生活習慣】
安全、丁寧、手際の良い仕事は、その人の生活が基礎となっていることが多いものです。社員や部下を、この観点で観察なさってください。その人の人間性に対する何らかの「気づき」があると思いますよ。個人と全体(勤務する会社、仕事上の取引先、地域社会など)をつなぐ基本は、家庭という「場」ではないでしょうか。家庭を基点に家族はそれぞれの帰属する学校や会社、地域コミュニティに出かけていってそこにいる人たちと関わります。大人は出向いた会社から、取引先や経済社会と関わりを広げて経済活動に関わり、時間が来ると基点である家庭に戻る事を繰り返します。家庭はベース(基盤)と言えるでしょう。
接客業であれば、お客様である相手を思いやる気持ち、製造業であれば出来上がった製品を使う人を思う気持ちがある人と無い人の差はどうでしょう。モノを単にモノとして扱うか、モノの背後にある人の関わりにまで慮って取り扱うのとでは、差が出ると思います。これを教えるのが家庭環境ですね。
【希望格差社会:山田昌弘氏】
かなり前の経済新聞か何かの記事のメモが出てきました。「日本は将来に希望が持てる人と絶望する人に分裂する『希望格差社会』に突入する」と言うものです。皆さんの実感はいかがですか。確かに夢や希望が失われる社会は、不安が増えて不安定になっていくでしょう。そして将来への不安は、企業ではリスクになるでしょう。山田氏はこれを回避するには、①不安そのものを無くすために様々な努力をすることと(この努力を怠った企業が社会問題となっていますね)、②将来の事を考えるのを一切放棄して、不安から一時的あるいは半永久的に逃げてしまうことの二つしかないと言います。破綻していく経営者は②の行動が多いですね。税理士事務所勤務時代、借金慣れをした経営者が、家を新築する、高級乗用車を買い換えるという光景を時折目にしました。
作家の高村薫氏は、「日本人は②の対応を取っており、企業も国も私たち生活者も、少し先の事を考えて、今、何を、どうするべきかという発想ができなくなっており、それがいまや日本人の体質なっている。」と指摘しているそうですが耳が痛いですね。
日本において、私が支援に入る中小企業でも、様々な問題が先送りにされるという現実は確かにあります。「自分さえ良ければよい」という考え方につながり、それが社会や会社の安心を奪うと言う悪循環傾向は一部に見えています。小中学校の給食費の滞納問題もその一つでしょう。
こういう時代だからこそ、論理も大切にし、議論や意見交換をしっかり行い、改善や発展を望み、私たち一人ひとりが「自分の頭でものを考える」事をしていく必要が増しています。
今から3年前(論座7月号)に経済産業研究所の小林慶一郎氏は、「市場における企業の行動を律するのは利益最大化行動であり、企業の行動を律するのは崇高な使命のために働いているという使命感であり、それを支えるのが顧客や仲間に対する『共感』であり、その共感の欠如が問題を引き起こしている。」と書かれたそうです。
創造経営本部が提唱する「共生・共益実現のための人づくり経営」を一緒に取組みましょう。一緒に北海道支部活動で、蝦夷地らしい共生・共益実現のためのノウハウを交換していきましょう。
【雑感】
「人間の財産は頭と心だけ」とピーター・フランクル氏は言う。私の亡き父は、私の祖父の代に商売が破綻し、父が13歳のときに父(私の祖父)が亡くなり、貧しい中樺太から北海道に引き上げてきた。炭鉱で働き、私たち子供に「教育」と言う財産を渡すために、苫小牧へ転職し、病気に悩まされながら苫小牧で亡くなった。現在経営コンサルタントとしてささやかに仕事をさせていただき、両親により「教育の場」を授かったことに感謝をしなくてはと思うこの頃である。
ドラッカー氏は、「できないことではなく、できることに注目せよ。」「目標によるマネジメントを実践せよ。」「労働力はコストではなく資源である。」と言う。素直にそう思う。目標を掲げ、社員の前で誓い、できる事を積み重ねても赤字を黒字転換できない企業もある。諦めるしかないのか、悔いはないのか、まだ力を注ぐ余地は無いのか、経営コンサルタントとして自分の非力さを突きつけられるときである。時として、普通の理屈で説明がつかない状態に陥ることはある。
「経済人仮説」なる用語はあるものの、中小企業の現場に入ると、働く個々の人間は、それぞれに希望・欲望・不安・慣習といった要因を持っている。経済主体者と言われる人間だが、必ずしても経済的合理性に従って行動しているわけではないという場面にぶつかる。理屈で動いてもらえない、納得してもらえない場面に必ずぶつかる。こんなとき、私は誠心誠意対応するしかない。創造経営で学ぶ、「過去と他人は変えられない。今日から、自分から、できることから継続。」という教えを噛み締めるときだ。
[ 更新:2007-02-01 16:30:43 ]