【仕事:働く意味】【競争】【企業の環境適応】【組織の3要素:共通目標】【組織の3要素:貢献意欲】【生産:技術】【自利利他】
【仕事:働く意味】
なぜ働くのだろう? 新人研修や管理者研修の受講生に時々質問すると、「食べるため」「生活のため」「自己実現のため」「お金をもうけ、いい車やいい家を買うため」などといろいろな回答が返ってくる。私自身、トヨタの新車セールスマンから社会人が始まったが、最初は崇高な労働観や勤労観は持ち合わせていなかった。セールスマンの世界だから、当時のトヨタは歩合給の割合が他社よりかなり低いとはいえ、割り当て以上に売れると金銭的には恵まれた。けれど、毎月毎月ノルマがゼロにリセットされ、メーカーが開発したものをメーカーの販促マニュアルや販促研修にのっとり、カタログとセールスかばんを持って歩く毎日に知的な飢餓感を覚えた。上司や支店長の転勤等もあり、満4年で退職、苫小牧市内の税理士事務所に簿記会計も知らぬまま採用してもらった。
税理士事務所では、簿記の3級の取得から始まり、所長が教育熱心であったことに助けられ、数多くの研修を受講させていただき、実務力に磨きをかけることができた。結果的に合格はできなかったが、税理士試験も4年間は毎年受験していた。私費で通信教育を受けながらの勉強であった。金融機関や取引先に、自分の勤務する税理士事務所の評判が高まることがとても嬉しかった。入所時は総支給額10万円の給与からのスタートだったが、3年ほど経過してから給与も徐々に上がっていった。税務調査で申告が是認されることが喜びでもあった。10年以上、自分自身の成長が実感でき、もっと会計専門家して、コンサルタントとして力をつけたいと常に思っていた。
数年前にフリーコンサルタントとして独立し、個人信用と組織信用の落差のある現実に、いい意味の苦労をさせてもらいながら現在に至っている。社会に、取引先に認知される、信用されるということがどれほど大変で、また重要なことか今尚しっかり勉強してもいる。
最近、「自分らしい仕事がしたい」という意見や希望を聞く機会が増えている。まず自分が認められたいということなのだろうが、特殊能力や才能に恵まれた人ならともかく、私たち普通の能力の庶民は、採用され、働く場で、仕事を通じた社会貢献ができて、その次に自己実現ではないかと思ってしまう。若いうちは、会社を良くし、取引先に感謝されることによって、徐々に自分が認められることとなっていくのではないだろうか。別に若者の夢をこわすつもりはない。
人生を折り返し、働くことの意義は、①生活維持の手段であり、②仕事を通じての自己実現であり、③仕事を通じて広がる社会との関係の構築(他者のためになる)が絡み合ったものであり、この中の一つだけが目的や意義ではないと思うようになったこの頃である。
【競争】
「競争」は、個人的にはあまり好まないけれど、受注や信用も、企業間のたゆまぬ競争によってもたらされたものであることは素直に認めたい。同業他社と比較して、社会や顧客にどれだけの価値(喜び)を提供できたかが決算書に集約される。中小企業であっても、みなしのぎを削り、努力の結果として取引され、信用されたところが継続的な取引となって持続していく。その積み重ねが売上であり、経費を払い、従業員に給与を払い、株主に還元し、納税して豊かな企業を作っていく。強い決算書となっていく。その原点が、「競争力」とするなら、好きとか嫌いとか言ってはいられない。自分にあった仕事、自分がやりたい仕事の主張もいい。現実にそれに巡り合えるならなおいい。しかし、自分より世の中や企業が先に存在している。創業する場合は良いとして、サラリーマンとして雇用されるとするなら、自分が雇用される会社の目的や期待に応えることが、自己実現に一旦優先するのではないだろうか。新人時代はともかく、年齢30歳以上で仕事の成果を上げられない社員、上司や部下の期待に応えられない中堅社員が、自分のやりたい仕事に巡り合えないことを嘆く姿は見苦しい。40歳以上になったなら、関わる人のために、関わる人に尽くすことにより、自分も生かされると考えて行動したい。若者に言いたい。能力を磨きたがらない先輩や上司は、5年、10年の年齢差があろうと、それくらいなら一定年数を耐え、能力開発を続けることにより、仕事で抜くことは絶対できる。そのときが自己実現のチャンスだ!
【企業の環境適応】
人でもモノでも生み出されたときは存在理由があったと教えられた。生み出された後に存在理由がなくなると、排除される(取引を停止される)のが企業社会の現実なのだと思う。最近はあまり見かけなくなったけれど、2~3年前までは経済新聞などの破産公告に以前勤務していた事務所の取引先が掲載されることが定期的にあった。私が勤務時代から破綻の兆しのあったところが大半ではあったが、一部にはどうしてこうなったのだろうという企業もあった。
滅びる企業は、金融機関が融資してくれないから、競争相手に負けたからというより、日々刻々と変化する環境に適応できなかったからだろう。この点、私自身も感度が鈍いので、自分への反省の思いがかなりこもっている。環境変化を肌で感じ取り、主体的に対応していくというのは結構難しい。しかし、管理者層以上はこのセンスを磨き続けないと、自分の所属する企業は滅びていくことを肝に銘じなければいけない。生業規模ながら自分でコンサル業を営んで数年経過した。真剣勝負の中小企業経営者と接すると、見えるものがサラリーマン時代とずいぶん変わってくる。適者として生き残るには、歯を食いしばって必死に努力する場面が数多いということだ。力強い生き方ができない経営者や企業は、いつか淘汰されることは間違いない。
【組織の3要素:共通目標】
仕事で関わる企業で、黒字基調の企業はトップと社内のベクトルが揃っている。社員がトップと同じ気持ちで同じ方向を向くように、トップが様々な工夫を継続している。赤字のところは、ばらばら。トップも、「うちの社員は言っても聞かないから・・・」とあきらめて放任であるか、「いつも言っている。指示や命令はやかましくしている・・・」と社員の責任として転嫁している。時折黒字でもまとまりのない社員が多い企業もある。これは経営者が明確な哲学、哲学が大げさであるなら明確な意思を持っているかどうかの差が出ている。黒字が持続する企業では、トップは社員が共感できる「経営者の明確な意思」を継続して表明している。朝礼でも、ミーティングでも、会議でも、面接でも、あらゆる「場」を、経営者の意思を伝える「場」として有効に使っている。傍で見ていても、このエネルギーはすごいと思う。それだけこだわらなければ、浸透しないということを教えてくれている。注意点は、「会社のルールの守れない人は不要な人である」ことを徹底している点である。知的にどんなに優秀でも、会社の理念やトップの方針に同調できない人間は必要ないし、会社に残ることは本人にとっても幸せではないという姿勢を貫いている。
また、私も経験があるのだけれど、「みんなで、みんなで・・・」という年長のベテランほど、大きな声で、威張ってみんなの意見として一人でさっさと決めてしまうことが多かった。言いくるめられたようで、年少で社歴の浅い私たちは、「ばかばかしい、そんな上司と一緒にやれるか」と口には出さぬものの、士気はずいぶん落ちたものである。倫理観に欠ける上司の下では働きにくかった。嫌だった。ご注意いただきたい。
【組織の3要素:貢献意欲】
私の使っている辞書で「貢献」を引くと、「ある物事に力を尽くし、役に立つこと」とある。「意欲」は「進んで物事をやろうとする気持ち」とある。企業組織の中では、期待以上のことをすると、関わる人に大変喜ばれる。その前提には、まず自分にかけられる期待に気づけなければいけない。これが結構難しい。仕事は一人でするわけではないので、自分に肩書きが与えられ、管理者の立場にあるなら、一緒に働いてくれる人を信じて職場環境の整備に努めよう。その継続によって、従業員も上司を信じ、会社を信じるようになってくる。いい人材が入ってきても、環境が良くなければ力の発揮はできないものだ。能力があり、辞めて欲しくない人から先に辞めていくことが多い。まず身近な上司への信頼関係があって、努力をする気持ちがわいてくるものではないだろうか。我が家にあっては、家族を信じて家庭環境の整備をすることとなる。従業員に尊敬されない上司や会社、家族に尊敬されない親では、地域や顧客に長期的には支持されない。
【生産:技術】
今の時代、環境問題、エネルギーの問題から、「技術」に対する期待は高まっているし、「技術」直接ではないものの、関連づけて商品開発に成功した企業は売上を伸ばしている。競争の舞台は国内だけではなく世界となっている。変化はさらに激しくなると多くの人が警鐘を鳴らしている。
このような環境だから、製造部門の一人ひとりが、常に市場(お客様)の方を向いていることが重要だ。生産担当であっても、自分達がどのような構造で利益を出しているのか正確に把握しよう。製造部門では、材料や設備、製造人件費などの製造諸経費と売上高の差が売上高総利益となる。現実には、営業の価格交渉で売価が変更となることが多々ある。値下げなどのデメリットをコストダウンでどのように吸収するか、迅速な購買価格交渉に移せるかどうかが収益確保のポイントとなる。営業が悪いわけでも、生産が悪いわけでもないが、市場(お客様)動向が変化しているわけだから、赤字を罪悪とするならば、黒字にする責任を誰かが担わなければいけない。その意味で、製造部門は常に市場(お客様)見よとなる。ユーザーのことをひたすら考えて仕事に打ち込み、真の技術的な支えがあれば収益は確保できる。
【自利利他】
「自利とは利他を言う」とはTKCの創始者故飯塚毅先生が良く使われていた言葉だが、創造経営の創始者故薄衣佐吉先生は「自利とは他利なり」と教え、最近では京セラ名誉会長稲盛和夫氏が「利他の心」が重要と説いている。以下、日経ビジネス2006.10.2 8ページに掲載された稲盛氏の発言を紹介したい。
社会が豊かになり、欲望の赴くままに自分勝手に行動することが正当化されるようになりつつある。これは確かです。逆に損な役回りを引き受けて相手を立てる美徳は大事にされなくなったし、それを教えてくれる人もいなくなった。利他を実践するのは非常に厳しい生き方です。俗っぽい生き方に慣れ、それに染まった人には、特に難しいかもしれない。大企業であればあるほど、理解されにくくなっています。・・・・・私が成果主義を取りいれない理由は、会社はみんなを幸せにさせるべき場所だからです。いい業績を出した部門は、そうでないところを助けて引き上げるという信頼関係と哲学があれば、何も成果主義を採用しなくたって、みんな気持ちよく働いてくれるんです。・・・・・「人間として何が正しくて何が正しくないか」をリーダーが示し、価値観を社内で共有しなければ、どんな規制や制度も機能しません。
[ 更新:2006-11-01 12:07:47 ]