誰でも簡単に安価に専門知識を手に入れることができる社会です。それゆえ専門知識を豊富に持った人ではなく、簡単に言葉で表わせない「職業的な知恵」やノウハウを持った人、「人間的な心」のある人が一層求められている気がいたします。堀場雅夫さんの、「スピードを上げ、限られた時間から価値を生もうとするならば、好きなことをしなければ!」という意見はいいですね。古い西洋のことわざには、「チャンスの表の顔には危機と書いてあり、裏側にのみチャンスと記される。」ともあります。チャンスをつかみましょう。
◇建設関連のお仕事をされている方からは、「不景気だ」「仕事が無い」というお話をよく聞きます。住宅関連統計を見ますと、住宅の着工件数は1980年代後半には年間170万戸もあったのですが、1996年の消費税の税率引上げ前で164万個、1998年以降は110万~120万個と大きく減っています。世帯数の増加率は、核家族化や晩婚化の影響もあって1977年以降ほぼ一定で推移しています。総人口の増加率は、鈍化傾向から今後は減少に転ずる予測です。住宅ストックは、1998年で5025万戸に対し、総世帯数は4436万個と発表されています。これらの数字や推移(トレンド)をどうのように読み取り、今後の経営予測を行うかが問われているのではないでしょうか。単なる一時的なものか、構造的なものかを読み取らなくてはいけないと思います。
◆ 生産の改善の一つに工程数を減らし、納期を短縮するということがあります。製造業に限らず大切ですが、この「工数管理」は意外と行われていないものです。中小企業は本人任せであり、「標準」が無いところもあります。定規となる各社の「標準」が無くては、良いか悪いかの判断も感覚的なものとなってしまいます。この「標準」を決めるのは誰でしょう? 「現実の工数」を測定するのは誰でしょう? これらを比較検討する会議はいつ行なわれているのでしょう? 改善の第一歩はこんな所から始まるのかもしれません。
加えて、生産しやすい商品設計、「皆に受ける」から「フアンをつかむデザイン」へ視野が広がっていくなら更に良い方向へ加速するのではないでしょうか。
◇ 経営管理の予算統制は大切です。ドラッカーは辛口で、「予算策定は経営者の将来を予測する能力である。誤った予測に基づく目標に従うより、目標を持たない方がましである。」と厳しい発言をされたそうです。皆様はこの意見にどう反応されますか?
◆ユニクロの「障害者積極雇用」の新聞記事です。「障害者がいると弱点を補い、得意な点を伸ばそうと他の従業員の支援意識が強まる。その気遣いは顧客へのきめ細かいサービスのつながり、集客力が高まる。」とありました。私たちの職場内での相互補完関係はどうでしょうか?
◇作家の藤本義一氏の観点を紹介します。「有能なリーダーは部下を次の4通りに分けて管理している。①忍耐力があって現実的かどうか、②説得力があって実践的かどうか、③穏健であって理想主義的かどうか、④陽気であって社交的かどうか。リーダーを統率者とか指導者と言うのは古い。新しいリーダーは開拓者であり、後から来る者がより合理的にその道を伸ばしていける配慮を持つ者である。」
ワンポイント・・・カスタマー・サティスファクション(CS)とは?
『顧客第一』お客様の事を第一に考えて、その満足度を上げていきましょう。お客様は、個々人の立場や状況により「本当に欲しいもの」は違っているはずです。人口減少の流れの中にあり、新規開拓も大切ですが、取引を頂いたお客様との長期的信頼関係の構築はもっと重要です。お客様の満足を満たす商品創りと同時に、採算を充分に意識し、商品の価値を客様に理解してもらい、付加価値に見合った価格で取引ができる事を目標とします。私が最近利用しなくなったお店(飲食店)のお話です。 オーナーは研究熱心で、常連客への心配りも欠かさぬ方です。若いお客様の利用も多く、量が多くなる傾向がありました。個人でまた仕事の関連の人を連れたりで利用しておりましたが、2~3年前より量の多さががだんだん苦痛となり(私は幼い時に貧しく、残すのはもったいないという年代ですので・・・)、予約するたび「値段はそのままで量を減らして欲しい」旨を毎回お願いしておりましたが、いっこうに改まりません。オーナーは「残してください、食べ足りないよりいいと思っています。」と言われます。20代後半に転職した際、給料が激減し外食もままならない経験もあり、無理をして食べて帰宅後気持が悪くなることもありました。もう無理と思ったのは、私より数歳年長のお客様との打合せに利用した際、「中高年の食事なので量は少なめに」とお願いしたのも関わらず、いつも以上のボリュームで、お客様はかなりの量を残され、大変失礼な思いをさせてしまいしました。その後、仕事の打合せは別なお店となりました。探してみると、もっとリーズナブルなお店も見つかりました。『顧客第一』相手の立場に立つことの重要性を考えましょう。ヘビーユーザーの声はしっかり聴きませんと、そのお客様が離れた場合売上への影響は大きいはずです。私と同じような思いで馴染みのお店の利用を控えられた方もいることと思います。
★ ヤマダ電機社長 山田 昇氏 ★
・10年先の事は分からないが、むこう5年先を見て経営しなければいけない。
・投資効率は売上で決まるのではなく利益で決まる。1店当り投資回収期間は5年。初年度から黒字化が目標。設備投資資金は市場から、運転資金は銀行から。
・都市型店舗は利便性の良い、お客様を確実に呼べる言い場所(立地)というのはそんなにあるものではない。借りた店でうまくいく場合は、周囲にライバル店がない場合だけ。店舗には寿命がある。寿命をできるだけ長くしたかったら、最初からいい場所を選ぶ。
・人も商品もサプライチェーン・マネジメントも財務システムも全部独自のものを考え構築している。
★サンマルコ食品 社長 藤井 幸一氏 ★
「こんな商品、こんな価格、こんな納期」というのは自分の論理。「断る算段より造る算段」。現場での問題意識のすり合わせ、どうしたらできるのか、挑戦することをいとわない社風を大事にしたい。
★ トタニ技研工業(プラスチック製袋機の開発・販売) ★
トタニ技研の製袋機の特徴は、他社より高速に、かつ安定的に加工できる点にある。そして形状が複雑だったり、素材が特殊で加工が難しかったりする袋の製造装置に的を絞った。
「良い機械は良い社員が作る」という考え方を取る。全ての従業員が十分な問題意識を持っていないと、本当の意味で優れた商品は作れない。情報の共有化が大切。経営に関する様々な情報を自分なりに理解し、自分自身で行動に移すことが理想とされる。社員全員が新しい価値を創造することに誇りを持っている。
★梅南鋼材社長 堂上 勝己氏 ★
何事も肯定的に考える。何事も「ハイ喜んで!」と前向きに取り組んでこそ、より大きな成果が生まれる。クレーム処理では、また嫌なことが起こったと思いながら処理をすると、相手の希望する処理方法に到達するのがやっとだが、逆にクレーム処理こそ信頼回復のチャンス、社内改善のきっかけになると前向きに取り組むことにより、言い訳でなく改善のアイデアが沢山生まれ、相手の望んでいる以上の改善報告ができ、高い信頼を得ることができる。
リン・シャープ・ペイン著「バリューシフト」
社会倫理を逸脱した行為や過失を隠蔽する体質により、企業は存続の危機にさらされる。それは「道徳的価値と財務的価値の不均衡」が引き起こす現象である。企業に期待されているのは富の創造だけでなく、道徳的な枠組みの範囲内で事業を運営することである。企業には「人格」がある。「人格」は経営慣行に、組織構築に、トップの意思決定に大きな影響を及ぼす。
★ タカラ社長 佐藤 慶太氏 ★
大ヒット商品に依存した復活は、勢いが止まると途端に足腰のもろさが浮き彫りになる。権限委譲の弊害もある。組織の風通しが悪くなり、部門横断的に重点商品へのヒト・モノ・カネの集中投資ができなくなる。今後は資金の使い道や事業の方向性など先回りして議論する。
一つひとつの商品が磨ききられなくてはならない。創業者から引き継がれる執念深い開発魂が、若手に十分伝わって欲しい。人材も育ち、商品力が強くなればうまくいく。
★ エバオン 代表取締役 前西 桂信氏 ★
業績向上の鍵は、他社とちょっと違うことをやる。経営者は自分より優れた人と触れ合わなければ伸びない。
卸売業は、情報機能・サービス機能・金融機能・保管機能など様々な機能を持っている。豊富な在庫と即応性、これを追求するとおのずと小口のお客様を大切にすることとなる。
中小企業はいい人材を採用することが大事。人を育てるためには会社の未来を説明できなければならない。会社は社会の縮図でもある。強い企業つくりには、社長の「絶対つぶさない!」という社長のやる気と、社員と共に成長していくことが大事。
★ カルロス・ゴーン氏 ★
お客様から改善の余地を指摘してもらうことは刺激になる。従来は問題が生じた時に、責任のなすりあいが始まり、行動までに長い時間がかかった。今は問題に蓋をしなくなった。しかし過去は変えられない。迅速に有効な対応策を講じ、断固たる態度で実行する。来年の品質調査では、少し改善するだけでは意味がない。大幅な飛躍を目指す。
★ 操風会岡山旭東病院 院長 土井 章弘氏 ★
経営危機に陥ったのは、自分が財政状況を充分に把握していなかったため。収入面では職員みんなでアイデアを出し合い、1年で赤字から黒字転換できた。経営指針と経理公開が大きかった。
「施す」医療から「サービス業」としての医療へ。経営は利潤を追求するのではなく、理念を追求することが原点と思う。そのためには、「病院の成長」と「人の成長」がイコールでなければならない。社員の成長なくして企業の発展はない。
職員の研修費は売上の1%を目安にする。学術研修・接遇研修・リーダー研修・一般研修等々あるが、最も重要なのは人間教育。今後は、提案型・プラス志向・高い理想を持った職員育成により「学習型病院」になる。そのためには「何のために生きているのか」「自己実現とはどういうことなのか」を真剣に考える職員が増えて欲しい。
職員が満足して生き生きとして仕事をして初めて患者さまに良いサービスができる。患者様が何を求めているのか、しっかり声を聴くことができる。看護師は看護師の役割を果たすために、自分の能力や人間性を磨いて欲しい。
「念ずると花ひらく」の念ずるとは、願うのではなく実行すること、念じて実践することにより花ひらく病院つくりに励んでいる。
★ 味の素社長 江頭 邦雄氏 ★
海外市場では、経営者が自分の経営方針を現地の従業員に徹底させる。世界的企業に対抗し存在価値のある会社になるためにしていること。①他社と違う価値を提供する、②どこにも負けない技術力、コスト競争力もその一つ、トップシェアを持つ商品はコスト的には圧勝、③全員参加の経営、一人一人の従業員がやる気になって働くのと、給料をもらうために何となく働くのでは大差がある。
存在価値のある人として、働くためのモチベーションを従業員に与えられるかが鍵。生き生き働くことで生産性は2割も違ってくる。一人でいろんな事をやる多能工(多重活用・マルチ)スタイルでは、力がつき人員は半分で済む様になる。
世界で受ける刺激は、①経営は戦い、闘争心、「景気が悪い」などとぼやく企業に参加資格はない。②トップは自分で考えなければならない、構想力が必要。③いったん決めたらすぐにやるスピード、待っていると色々な要素が入ってくる。
亀型営業マンの勧め 北龍 賢氏
・上司と話し合う手間は惜しまない。
・裏付けの無い「やる気」だけでは行動しない。
・商談で気付いた点は必ずメモに残す。
・営業の基本をバカにしない。
・中小は大手に勝てないと思ってはいない。
・次回のアポは商談中に必ず取る。
【日経ビジネス他の印象記事・言葉】
* どうしたらお客様に喜んでいただけるか、お客様に喜んでいただける社員をいかに育てるか。(オートウェーブ会長 広岡 等氏)
* 変えるべきものは躊躇無く変え、守るべきものは徹底して守るという精神。(シャープの歴代トップ)
*時代は女性にも能力相応の地位を与えている。(遥 洋子氏)
*無一物中無尽蔵(釈迦)
*「花は咲き咲きて成就、葉は散り散りて成就、花は愛惜に散る」
* 先人の残したものには必ず意味がある。
*決断するとき、大衆の支持を当てにしてはならない。能力が無いから誰も味方しないのであり、「味方が無かったから負けた」というのは原因結果を取り違えている。・・・ものごとに対処するには、状況以前に手を打たなくては手遅れになる。・・・人間は欲望の動物であるが、欲望の対象と充足度は場合によって変化していく。(会田雄次著「決断の条件」より)
* 人間は欲に手足がついている。人は化物、人の心ほどかはり易きはなし。人は虚実の入れ物。…忍耐も又才能なり、好きな道だからただ一途なり。(井原 西鶴)
* 日本人は物事をぼんやり見ている。創造性は確かな認知と分析力をもとに生み出される。会話の中に「何故なら・・・」を入れる必要がある。
* 美しい行為は、美しい言葉から生まれる。(ゲーテ)
* 物事には作法がある。(小津 安二郎)
[ 更新:2006-05-28 14:13:40 ]