中小企業経営者が、経営方針の決定や今後の何らかの意思決定のために必要なものは何だろう。経営者を補完する幹部や管理職は、「トップが求めているのはこれだ!」とすぐ言えるだろうか。
経営者を補完する幹部や管理職は、「トップが求めているのはこれだ!」とすぐ言えるだろうか。会計を預かるスタッフは何を記憶し、資料として何を整理しておくといいのだろうか。指示される前に準備しているだろうか。職業人である以上、自分の仕事には責任を持って最善を尽くすのが礼儀だ。
会計に限定して考えて例示すると、@各事業年度の月別現金収支と現金残高一覧表(過去数年分)、A月次損益計算書や年次損益計算書の一覧表、B主要得意先別の売上高推移表(過去数年分)、C主要商品別の売上高推移表(過去数年分)はすぐ提示できるといい。現在進行のものも作るのは当然だ。グラフ化して視覚的に分かりやすくしておくともっといいだろう。
「データ」という言葉には、資料や材料の意味に加えて「推理のよりどころとなる事実」という意味もある。使う目的を考えながらデータを集め、使う目的に沿って加工処理を工夫し、それを読み込むことによって今後どうすべきか、いろいろ発想していくのが経営者だ。学術理論では論理の一貫性や一つの結論を導き出すことが求められるが、企業経営は医療の臨床現場と同じだ。相手とする患者は肉体的にも個人差があり、精神的にも個人差があり、乱暴だが治癒(完治あるいは平癒)に至るプロセスも対処方法も多種多様だ。病気は治ることが大事であり、企業は倒産せずに持続的に成長することが大事であり、理論が必ずしも優先するわけではない。
そうは言っても、マネジメント知識とスキルは絶対必要だ。自分の担当職種に応じて自助努力を怠らずに修得するものだ。学ぶには時間も体力も費用もいる。楽をしようと、時間、体力、お金を惜しんではいけない。