私の辞書では自律とは「他に縛られないで、自分の規律に従ってやっていくこと」とある。「自律した個人となろう、強い自己規律を持とう」というのが来年キーワードと思う。
「自己実現」(自分のやりたいこと)という言葉だが、私は10年前くらいから比較的若い世代の転職時のセリフとして聞くようになった。アメリカ合衆国の心理学者・アブラハム・マズローが、「人間は自己実現に向かって絶えず成長する生きものである」と仮定し、人間の欲求を5段階の階層で理論化したと学んでいる。
団塊の世代以降、世代が下るに従い個人主義の色彩が強まり、団塊ジュニアくらいから自己実現を皆が目指すようになったのだろうか。豊かさゆえ欲求水準がいい意味で高まることは喜ぶ必要があるのだろう。
自己実現は自分一人でできるものではない。自分を認める相手が必要なはずだ。多くの人が自己実現を目指すなら、関わる多くの人と認め合い、尊重し合わなければ自己実現は成就しないだろう。すると自己中心やわがまま、エゴイズムは減っていき、心豊かな社会に歩んでいくのだろう。関わる相手への支援、折り合って共に生きる力が、自分をさらに成長させる力となるはずだ。そこでは相手を育てながら自分を育てる能力、関わる相手とのコミュニケーション能力が重要となる。これは結構高度な能力と思うのだが、この関係性の中で生きる豊かな知恵は、私たち日本人はDNAとして持っているものだろう。今このスイッチを皆が入れる時が来たのかもしれない。
自己実現の自己評価基準に対し他者評価基準は何だろう。関わる人への貢献度で評価すると言っても、計量的に計測可能なものもあるだろうし、質や満足感などのように数量的表現にはなじまないものもある。マネジメントの側面で、帰属意識や貢献度、モチベーションを考える上で、言葉や感覚に流されず、掘り下げて考える必要がありそうだ。