今年も成長した企業の特徴
【総論】
今年を振り返ると、世間の流れでたとえ一旦買い控えが起きても、質が評価されている魅力ある商品やサービスの売上は、時の経過と共に回復しています。その会社は、ただじっと待っているのではなく、その時が来るまで商品やサービスを磨き続けています。地域にとって、ユーザーにとって、その会社の商品やサービスが無くなっては困るという存在価値を持っています。社内には元気な人がいます。元気な人は、お互いに切磋琢磨して、自分の魅力を高めようと無意識に努力しています。地域や馴染み客をよく知り、心配りが行き届いています。そして、経営者にとって実現可能と信ずる事業計画を持っています。
次に3社の事例を紹介しますが、内容はある程度加工しております。
①今年増収増益のA社は、基本はワンマン型のトップダウン経営で、3年連続の増収増益です。基本となる製品カテゴリーは5つに絞り込んでいます。製品品質の維持向上を30年も続け、新規顧客開拓に際し、5年前から新しい市場に新しい売り方を試行錯誤した結果がプラスに現れています。売上高は過去10年で4倍になりますが、設備投資は減価償却費の範囲内を厳守し、堅実なキャッシュフロー経営を実践されています。
②今年の予算対比では減収増益のB社があります。数年前から道内市場の縮小は避けられないとし、リーマンショック後にはすぐに社内の徹底した無駄取りに取り組みました。機械の稼働率、車両の運行状況を3年にわたりデータ化し、機械は営業と連動して操業度を高める努力、運行採算に課題のある会社所有車両は廃車、減車を運行部門に理詰めで時間をかけて納得させ、車両の運行コスト、メンテナンスコストの削減だけでなく、適正人員の見直しから部門人員の削減により大きくコスト圧縮ができ、今年の増益に貢献しました。トップの考えを浸透させるにはかなり苦労をされていますが、トップ主導で新事業開発も10年にわたり取組んでいます。ですから来年も楽しみです。
③C社は社員6名の小規模事業ですが、過去3年でC社こだわりの基本素材を活用した新商品5種類供給開始。価格競争(不必要な値引き)をしない価格戦略で独自の戦いを進め、黒字を維持されています。トップは社業同様に20年以上も地域貢献にも取組んでいます。
以下、今年も成長を続ける企業の取組を整理します。
(1)人生を楽しみ、売りに目が向いている
まず何のために自分がこの事業(商売)をしているのか、深く考えています。ですから、売れること、こうすれば売上につながるというイメージがあり、そのイメージの実現が会社の成長のエネルギーになっています。売れるから元気が出て、売れるから意欲も上がります。売れる成功体験が、相乗効果になっています。
社員のために売れる商品をつくることと、買ってくださるお客様を開拓することにトップが実に熱心です。当然すべてがうまくいって、常にイメージ通りに売れることはないので、「またダメだったね」という体験もなさっています。ダメだったときは、しっかり素直に反省をしています。最初は小さな結果(売上)であっても、「頑張ればなんとかなるね!」と喜び、「ここまでやったから、もう少し頑張ろうね!」と積み重ね、黒字を伸ばすことにつなげています。これもトップの心の中に、いろいろなアイデアがあるからできたことです。
商売は儲けるためのものでもあるのですが、自分の人生を楽しむためのものでもあるとしています。仕事が楽しいので、人一倍働き、人一倍考えても、全く苦にならないようです。そこから成長の芽を見つけています。別な表現をすると、適切な肉体労働のできない人は、適切な頭脳労働もできないと思っています。
(2)顧客との信頼関係つくりに熱心
人は本音と建前を使い分けるものです。お客様との人間関係をつくる上で、まず相手と会話ができ、さらに対話ができ、警戒されなくなるには時間(歳月)がかかることを知っていますから、顧客つくりに長い時間軸を持っています。ですから、今の自分を受け入れ、自分の周りで起きていること丸ごと受け入れています。
人間は与えられて初めて便利さを実感するということをご存知なので、プレゼント(与え)上手です。
お客様に恵まれる経営者を見ていて感じることは、「運がいい人」のように見えるのですが、「運に強い人」というのが正しいようにおもいます。人生ではたくさんの分かれ道(分岐点)があります。その分かれ道(分岐点)でどのように意思決定するかなのですが、成長する企業の経営者は、自分の利だけではなく、業界や地域や顧客の利も慮って意思決定されています。だからますます信頼されるのです。
(3)会計情報を大切にしている
正しい原価が分からないと、正確な利益が分からないことを知っています。原価の構成が分かるから、効率化も指示できます。加えて、どの商品やサービスが利益を稼いでいるか、チェックできる仕組みをつくっています。これらのデータをもとに、需要を創造し、競争相手と不毛な競争とならぬよう、市場を棲み分ける商品やサービス開発につなげています。そして、今あるお金の価値、今持っている固定資産の価値を最大限に活かそうとしています。伸びる会社では、5年前と今を継続して比較しています。そして同時に、今やっていることの5年後を想像する努力もなさっています。
[ 更新:2012-12-23 09:59:51 ]