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格差是正の雇用政策と賃金

終身雇用と同一労働・労働賃金、差別廃止のバランスのとり方は実に難しいものがあります。このようなことから創造経営では、経営者の仕事はステークホルダーの利害調整であり、給与制度は経営者の経営観・従業員観の表れだといっています。

 19年2月の経済新聞にコラム「大機小機」にペンネーム隅田川氏が書かれていたことを読んで考えました。同一労働・労働賃金という意見があります。最近は「同じ仕事でも、アルバイト・パートと正社員で賃金が異なるのはおかしい。」「能力があるのに、年齢で採用されないのはおかしい。」という新聞記事も多く見かけます。給与改定の仕事で、関与する企業の社員面接を行うと、このような意見を聞くこともあります。同一労働・労働賃金と、年齢差別禁止と、終身雇用が矛盾なく実現するかどうかを考えようとこのコラムでは言っています。
 同一労働・同一賃金という意見の背景には、「パートとはいえ、正社員と同じ仕事をしているのに、正社員よりはるかに低い賃金は気の毒であるばかりか不平等だ。」という気持ちがあるのでしょう。では賃金は何に基づいて決定されるのでしょうか。同一労働・労働賃金を厳格に実施すると、正社員とパート社員の給与は同じになりますが、年功格差賃金はなくなります。この場合は完全な能力給であらねばなりません。勤続年数の差という単純な理由で、同じ仕事に就く人に異なる賃金が払えなくなります。
 年齢差別の禁止も厳格に実施すると、募集採用時に差別を撤廃するなら、解雇の際の年齢差別も撤廃する必要が出てきませんか、このコラムで提示しています。定年は年齢を理由とした解雇ですから、定年制度も撤廃すべきという論理も出てくるというのです。仮に、同一労働・労働賃金が徹底され、年齢差別も徹底されたとしましょう。雇用状態は年功賃金もなく定年もないとします。この場合、労働者の立場では、同じ企業に長期にとどまる誘因が薄れ、自分の仕事を最も高く評価してくれる企業に移ろうとするでしょう。一方企業側は、定年がないのだから、社員の年齢に関係なく、賃金の割に貢献度が低い社員を排除する、整理するようになるのではないでしょうか。人も物と金で動き、そのように取り扱われる制度は望ましいものでしょうか。
このように終身雇用と同一労働・労働賃金、差別廃止のバランスのとり方は実に難しいものがあります。このようなことから創造経営では、経営者の仕事はステークホルダーの利害調整であり、給与制度は経営者の経営観・従業員観の表れだといっています。

[ 更新:2007-03-12 07:05:40 ]

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