【コミュニケーションのポイント―その2】

3.読んだことの理解
4.理解したことの伝達

3.読んだことの理解
 最近の私たちは、仕事で電子メールを使い、やり取りをすることが増えている。一瞬で送ることができるし、すぐに返信も来るし、一斉送信もできるし、転送もできるので非常に便利である。私は個人的にだが、年長者に対してはできるだけ手紙に準じて電子メールに向き合うようにしている。実際のやり取りは、関わる相手により電子メールへの向き合い方は様々である。
頻繁に電子メールでやり取りをしていると、双方向でコミュニケーションをしているような、対話をしているような錯覚をするが、表情は見えないし、声も聞こえない。質問に回答をするにも、文字による表現だから用語の使い方も、用語に込める気持ちも同じとは限らない。性別や年代やキャリアや職種や階層が違うと、同じ言葉でも、同じ文字でもニュアンスは微妙に違っていく。用語も分かりやすいものもあるが、理解や解釈が難しいものもある。言葉や文字表現を大事に使おうとする人もあれば、とてもラフに使う人もいる。
 このような現実があるから(書き手側のレベルもあるのだろうが)、読み手の理解力の範囲でしか伝わっていかない。
 私は仕事上の文書は論理(筋道や理屈)に基づいて書かれ、交わされると思っている。ビジネスルールにのっとり、ビジネス文書のマナーにのっとり、ビジネス文例を参考にしながらお互いに作成し、それがやりとりされる。だから、ビジネス社会で5年、10年と経験を積むと、受け取っても分かりやすい文書が書けるようになっていくものだと思っている。そうならなければ、仕事上のコミュニケーションは問題が多くなるし、いつまで経っても話が通じない相手とは、信用や信頼は得られなくなってしまうからだ。いくらお客様とは言え、40歳、50歳を超えている相手に対し、専門的なことはともかく事務連絡レベルにまでこちらがいつまでもへりくだって、何年も毎回手とり足取りはとてもやっていられないという気持ちになる。
 私個人の経験ではあるが、仕事上で論理に基づかない文章や、論理に一貫性のない人の文章に対応するのはとても疲れる。電子メールでは、固い文書の後の顔文字や絵文字も、1行くらいなら微笑ましく感じるし、和むこともあるが、中高年の相手から顔文字満載で来るメールには、どうしたものかと思ってしまう。ただし、私が時代遅れなのは素直に認める。
 文章を読んで理解するということは、文章として書かれたことを、書いた人の意図を理解すること、書いた人の心や気持ちを一旦受け止めることだ。だからいただいた文章を本当に理解しようとするなら、さっと流して読むのではなく、相手の顔を思い浮かべ、書かれた背景を想像しながら読みこんでいくと理解は深まるが、これは今の私の年齢でやっと思うこと。私も若い時だけでなく、30〜40歳代は表面的に読み流し、あるいは自分の思い込みで解釈し、多くに人の迷惑をかけ、落胆させたことと思う。だからこそ、大事にしたい人には注意をし、大事に読みこんでいきたいし、書くときも心を込めたい。

4.理解したことの伝達
 私の30年以上の仕事経験で痛感することだが、大切なことは「伝えたこと」ではなく、「伝わったこと」ということだ。今でも時折、確かに伝えたのだが、どうも伝わっていないという経験をする。年1〜2度だが、「私聞いてません!」と開き直られ、「いつどのように言ったか証明して下さい!」と気色ばむ人もいる。私の心情としては納得したくない時もあるのだが、仕事上では「伝わり方が悪い時は、伝えた方の責任」という覚悟がいる。伝える相手のレベルや、相手の置かれている状況を客観的に把握できるようになるには、相手と関わるそれなりの時間や、失敗という不快な経験も必要になる。
 仕事上での伝達の注意点を思い浮かべて並べてみる。
@相手の記憶力(記憶容量)の範囲に納まる量を伝える。メモを取らない人、復唱しない人には、長い話や文章のように量が多いものは覚えきれない。私も初めての事柄で、長いものは覚えきれない。例えば、レストランで今日の日替わりは…と、次々に立て板に水のように淡々と言われると、最初の料理は何だったかもう覚えていない。
だから自分の専門外の難解用語が含まれているとなおさら覚えられない。だからこそ、記憶に残りやすい表現、話した後の確認、話す内容の絞り込み、事前にメモにしてそれを渡しての伝達などの工夫が伝える側に必要になる。かといって、いつもその配慮をすると、それが当たり前として覚える工夫や努力をせずに、たまに私の準備ができなかったり、忘れたりすると「伝える気配りが足らん」という人もいる。
A箇条書きを活用する。それも短いセンテンスで、多くても片手の5つ以内に絞って伝達したい。
Bキーワードや記憶しやすい言葉や説明を工夫する。(願いは、聴く側が自分で記憶しやすいキーワードを思い浮かべながら聞き進めて欲しいのだが・・・)
C相手に納得してもらう。単にメッセンジャーとして聞く人は、表面的にしか聞かないものだ。将来自分の仕事になるかもしれないから、自分の仕事にしたいからと、少しでも理解しよう、自分でも分かろうと思うような聴き方を指導できるなら理想だ。私はこのように部下の指導はできなかった。部下の資質でこれができる人がいただけだ。
D共感して聞いてもらえるような表現力を磨きたいし工夫もしたい。不信感や不平、反発の気持ちで聞かれると、誤解や曲解されて上手く伝わらないし、上げ足も取られる。

[ 2009-03-04 16:50:26 ]


その他の記事

記事のインデックスに戻る