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若かりし頃の仕事場面

個人成績より支店成績が大事

私がまだ新人の新車のセールス時代のやっと三年目、ノルマに追われながら数少ない商談を進めていた。
これをまとめれば、やっと自分のその月の売り上げは目標に達するという場面だった。
この商談には日産も合い見積もりが出ていた。その時の上司が日産のデーラーのデスクマネージャーと知り合いで、私がそれをあきらめると、別のトップセールスの商談から日産は手を引くという流れだった。
私の商談は個人宅の乗用車、別の中堅セールスの商談は法人でライトバン5台一括というものだった。当時の細かな社内事情はここでは省いて、支店の値引き枠をこのライトバン5台一括契約に集中させて支店の当月ノルマ達成という結果になった。私の商談は、値引き枠が全く使えないことになり、当然ながら日産が商談をまとめた。
このように、自分の商談チャンスを他の人に譲れば、会社全体として当月ノルマ達成になるとしたら、さてあなたはどうするだろう?
譲るというと言葉はきれいだが、商談を潰されというか、横取りされたた感じだった。
支店経営側としては「3年生セールスのノルマ達成より支店全体のノルマ達成が優先するのは当然」という雰囲気だった。
当時は役職が上に行く人ほど、「月次ノルマの少ない若手一人のノルマ達成よりも、支店全体の売上達成に貢献すべきである」と言うのが普通の時代だった。
今風の経営用語で固く表現すると、「個別最適」と「全体最適」のジレンマとでもいうのだろう。
企業は組織としての成果を最大化しなければならないから、役職が上になるほど全体最適を優先するのは、今ならわかる。
でも中小企業の場合、個を優先して、会社が倒産するようなケースなどそうあるものではないだろう。
自分の個人業績の達成を至上目的にしている営業担当社員にとっては、上司からの命令となれば一応従いはするが、本心では受け入れ難い優先順位のつけ方を押し付けられたと感じるはずだ。
上司の命令に従った挙句、当月目標未達でマイナス評価をされたのではたまらない。これが貸しとなって、後日清算される仕組みや、全体最適に尽くす行動(全体貢献)をプラス評価する明確な制度がない限り、この考え方をセールスは受け入れないだろう。(当時はこのような救済制度は全くなかったが、今はあるのか知らない)
また「社長になったつもり」でと言われても、実際に社長にならなければ分からないことも本当に多いだろうし、社長になれるチャンスのない会社もある。
本人に社長になる気がなければ「社長になったつもり」でという言葉も心に響くことなく頭の上を通過するだけだ。
また、支店内で自社都合の全体最適を考えて調整している間に、他社に売り上げをさらわれることだって起きた。
かつての勤務先のトップセールスは(年間100台以上の新車を売る人)、売上げにつながると見れば、猟犬のように飛びついていくタイプか、強引に誘導するタイプが圧倒的で、個別最適(まず自分の受注ありき)の典型的な一匹狼タイプの人が多かった。当時は、全体最適など考えていては、目の前の商談の突破力は生まれてこなかったのだろう。
組織のトップは規模の大小を問わず、個別最適の調整をしながら、全体最適の視点を持つことが必要なことは、今の自分の立場では理解できる。その場合でも、トップが最後は公正に自分を評価してくれると思うから、部下は安心して(?)個別最適での競争に邁進できる。
しかし、自分が譲った結果の全体への貢献行動が上司から評価されないとなれば、その後部下は自分のパフォーマンスばかりを気にするだろう。当然ながら、結果として全体最適が実現せず、組織全体の効率や効果が発揮できないことにも起きうるだろう。仮に野球なら、監督がここはバントで走者を進めたいと思っても、この犠打が適正に年俸に評価されなければ、打者はバントサインを無視し、査定の高差が見込まれるホームランやヒットばかりを狙うのが人間心理ではないだろうか。
部分最適と全体最適の調和は、理屈の学びでは分かりやすいが、実務での運用はそう簡単ではないと思う。

[ 更新:2016-11-20 07:57:06 ]

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