師走12月を終えて、睦月1月の始まりにあたり
民間シンクタンクの北海道未来総合研究所は、2010年の道内成長率(総生産の伸び率)を、物価変動の影響を除いた実質でマイナス0.2%とする予想を示した。09年度のマイナス1.2%の見通しから1ポイント改善するがマイナス成長が続くと見ている(日本経済新聞2009.12.29-27面北海道経済より)。この予測数値は皆さんの実感と比べていかがだろうか。もっと厳しい現実を前にしているのではないだろうか。2010年度の政府予算案で北海道開発予算が09年度に比べ17%の大幅減額となる。建設関連業であれば、我社にどのような影響が出るのか、それに対しどうするのかしっかり考えよう。
どうこう言ったところで、今年も厳しい1年が見込まれる。逆境の時は奇をてらわないことだ。素朴に、実直に、お客様の満足するもの、癒しのあるものを求め、お客様の要望に心をこめて応えて行こう。ハードよりもソフト、お金よりも知恵で質(経営の質・管理の質・働きの質)高めて行こう。永続してきた企業は、「自ら学べ」「取引先に学べ」という。今に生きる私たちは、これまで生かされてきた力、生き抜いてきた力がある。自分の大きな潜在力を信じて今年を歩み始めよう。
船井総研の船井幸雄さんの話は分かりやすい。船井さんの本に書かれていることは、どの本を読んでも概ね次の方向を示している。
1.現在起きている流れ
(1)起きること、生ずることは、世の中が良くなる方向へ発展する流れにある。
(2)私たちは日々レベルを上げる、質を上げる、順位を上げるよう精進すること。生き残るには、それなりの力が備わらなくてはいけない。私たちは生き残るにふさわしい力をつける義務がある。
(3)無理や対立はいけない。調和されたもの、バランスの良いものが永続する。
2.生き残るための行動指針
(1)はっきりと分かり、素直に理解でき、自分が心から納得できたことを行う。
(2)自分が自信を持てること、責任を取れること、迷わないことを行う。
(3)毎日反省し、わがまま勝手で人を困らせない。
(4)自分の強みを伸ばすこと、長所を生かすこと。
中小企業や零細事業所は全国で420万もあるという。その中で技術革新を起こし、ベンチャーとして歩めるのはごくわずかだ。確かに中小企業は非効率な部分はある。その原因は、(1)「同族経営のため外部からの規律が働かず、業績が悪いまま存続する」というが、これは大企業にも見られる。(2)「将来性はあるのだが、後継者に恵まれず廃業している」というが、本当に将来性があるなら後継者は出てくるし、事業を譲り受けようとする企業も現れるし、廃業後その将来性に攻め入ってくる企業もある。
たんすの中の衣類の交換のように、成長性の高い企業を参入させ、将来性のない企業を退出させるということは機械的にはできないという現実がある。今中小企業として生きる私たちがすることは、存続(生き残り)を目指し、強みのある本業を核に再成長することだ。創業30年以上の企業は、みな特徴として粘り強く改善をしてきた歴史を持つ。画期的かどうか先進的かどうかは別に、常に自分なりのイノベーションを行ってきたから、環境適応を行ってきたから今につながっている。
現在起きている少子高齢化は消費の縮小が避けられない。大切なことはこれらの現実を受容れること。顧客の維持や新規開拓には、これまでの販売実績をデータとして集め、編集・加工し、分析の裏付けをとる必要がある。
暮れに訪問した関与先社長との対話の中で、「我社の事、例えば商品・製品、技術力が取引先に意外と認知されていない」という事があった。私の経営コンサルタント業務も分かりにくいと言われることが多い。分かりにくいから、伝わらない。分かりにくいから、選ばれない。分かりにくいから、広まらない。この連鎖の中にあるのが中小企業の現実でもある。顧客も、我社の社員でさえも、「なぜ、競合他社より、我社を選んだ方が良いのか。」その理由を分かってもらえる工夫、分かってもらえるよう支援してくれるネットワークが必要であると昨年から訴えている。自力と他力の両方が必要なのが中小企業だ。共生・ネットワーク・絆を今年のキーワードとしたい。自分と、我社と、誰かと、距離の離れた地域とであっても共に成長することを意識しよう。創造経営吉見ゼミもそのような場となることを願って開催している。
企業に利益は絶対必要だが、単にいくらでも儲かればいいのではない。利害関係者に適正な分配ができる利益が必要なのであり、利害関係者への支払義務を果たした残りが本当の利益ともいえる。そして利益は企業存続への投資の原資ともなる。貸借対照表を見て負債依存度が高い、金利負担が大きい企業は持久戦が難しいから、腹をくくった改善が求められる。これは苦しい作業だが避けては通れない。
厳しい今年の1年を乗り切るには、とにもかくにもチャレンジをすることだ。チャレンジは無謀なことをすることでも無茶をすることでもない。生き残り、持続するための挑戦だ。それを投資と表現してもいいだろう。チャレンジして例え失敗しても、その失敗からしっかり学んで、また新たなチャレンジをする。その繰返しが結果として(何もしない人よりも)早く苦境を克服するのだと信じて歩もう。
私も私なりの努力と行動は続けている。同世代で出世した仲間や、私より年少であっても伸びる経営者の多くは、そのような経験を当然のことのように積んでいる。それに「できる。できる」と言い続けていれば、初めは言葉だけの強がりだったものが、習慣化することにより本気となり、確たるものとなり、実際にできたという結果となることは事実だ。
税理士事務所勤務時代、「私は一度交わした契約は必ず守るという覚悟で取り組んでいる。」「自分が口に出した言葉は、間違ったと気付いても絶対訂正しない。」という社長(故人)の会社の税務担当をしたことがある。その社長は、3年おきにめぐり合わせる1千万円から3千万円の貸倒やトラブルを克服し、毎回赤字を黒字に転換するだけでなく、自社の生産システムや原材料の調達の仕組みを革新されてきた。税務調査でも結果として調査官を納得させ続けた。そのためにも理論づけ、理屈付けはしっかり行う方であった。経営者としての見本を示してくれたと思っている。
全てに100%を求めるのは無謀だとは思うが、「私はできる、自分ならできる!」と自らに自信を植え付け、目標に向けた努力を、歯を食いしばってでも続けていくことで、色々なことが順次可能になるのではないだろうか。
ホームラン王である王貞治氏も「プロは絶対にミスをしてはいけない。ミスをしないのがプロだと自分を戒めよ。」とテレビドキュメンタリーで言っていた。私たちは本物、プロになるために、常に意識を高く持ち続けていきたい。
3年ほど前でしょうか、高校の修学旅行から30年以上経て薬師寺を観て、その後法隆寺の山門へ向かう途中に、西岡常一棟梁の使った大工道具が展示してある施設がありました。経済新聞の私の履歴書に書かれていたことや、西岡常一棟梁著「木に学べ」(小学館)「木のいのち 木の心」(草思社)を思い出しながら眺めてきました。
今回「木に学べ」「木のいのち 木の心」から私が印象に残る言葉を少し紹介します。職人魂はプロ魂であり、経営にも通じるのではないでしょうか。以下抜粋引用です。
・宮大工は民家は建ててはいかん、けがれる。 儲け仕事に走りましたら心がけがれる。
・木は正直やが、人間はそやない。 人間は朝に言うてることと夕方すること違うけどね、木というのは正直です。
・仕事とは「仕える事」と書くんですわな。
・自然がなくなったら人間の世界がなくなるんです。そう考えたら、木も人間もみんな自然の分身ですがな。
・人間も同じですな。甘やかして欲しいものがすぐ手に入たんじゃ、いいもんにはなりませんな。
・人間が知恵だしてこういうものを作った。それがいいんです。それが文化です。
・一人前の職人になるためには長い修行の時間がかかります。近道や早道はなく、一歩一歩進むしか道はないからです。学校と違って、頭で記憶するだけではだめです。また本を読んだだけでもだめです。たくさんの人が一緒に同じことを学んでも、同じ早さで覚えられるものでもありません。自分で経験を積み、何代も前から引き継がれた技を身につけ、昔の人が考え出した知恵を受け継がなくてはならないのです。なぜならすべての仕事を基礎から、本当のことは何なのかを知らずには何も始められず、何をするにしても必ずその問題にぶつかるからです。途中を抜かしたり、借りものでその場を取りつくろっても最後には自分で解決しなくては職人の仕事は終わりません。
[ 更新:2010-01-08 13:01:50 ]