やっと3月になったばかりだけれど年末年始がずいぶん前のことだったような気がする。今年に入り新聞やビジネス誌では、理由の後付けみたいに金融工学云々、昨今の実態経済不況を的確に予測したという記事や本の広告が目につく。専門職や評論家と違い実務の中にいる企業人は、理由や原因が論理的に分かることよりも、現在の苦境をどうやって乗り切るかの方がはるかに重要な問題だろう。
金融工学の本は私も買って学ぼうと思ったが、金融工学の論理立てに私は全く馴染めなかった。「人間は皆個人の利益を追求するもの」と単純に決め付けていいのか疑問だった。いろいろな物事があるが、必ずしも物事は計画通りに動くと限らない。余談だが、私の関わりで新事業計画が諸事情から思惑を外れ、資金に窮すると、金融機関をはじめ人生の達人や経営の達人を自認される方たちからは「ビジネスモデルに難があったのでは?」「予測に甘さがあったのでは?」「経営コンサルタントが指導を誤ったのでは?」と問い詰められた経験もある。新事業の成功は、そんなに甘いものではない。時間もかかるし、たくさんの御苦労がある。
金融工学では計算上の合理性だけが存在するから、テキストに道徳や倫理などが出てくるはずもない。前提条件が変わると、関わる物事は変化するし、リスクも起きる可能性が常にあるものだ。しかしそれらが十分検証されていなかった。まさに仮想現実(ヴァーチャル)の世界が金融工学の世界だった。私たちは現実社会(リアルワールド)に生きているのだ。
[ 更新:2009-03-04 16:48:53 ]